李通


このエントリーをはてなブックマークに追加

李通 文達

 

 

生没年:建寧元年(168)~建安14年(209)

 

所属:魏

 

生まれ:荊州江夏郡

 

李通 忠烈 勇将

 

李通(リツウ)、字を文達(ブンタツ)。大半の人が知らない武将ですね。魏って、なんかこういう個人武勇系の人は典韋と許チョしか知られてない気がするの……。

 

この人は曹操にほれ込んで死力を尽くした人物の一人で、逸話の節々からも任侠の人というイメージが伝わってくる人です。

 

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

暴れ義侠、曹操と出会う

 

李通は史書の第一文から「男気のある人物として長江流域、汝水の地で知られていた」とあり、まあ、かなり広い範囲で有名人だったようです。

 

そんな李通はある時、陳恭(チンキョウ)という同郷の友人と義勇兵を結成しました。この時、有名人の李通を慕って大勢の人が集まっています。

 

 

さて、そんなこんなで一勢力の頭目となった李通。陳恭とともに、周直(シュウチョク)と言われる豪族と仲良くし、表向きはにこやかに接していましたが、裏では相当に嫌っていた様子。

 

ある日、とうとう限界が来た李通は、陳恭に「あいつ殺そうぜ」と物騒な提案をしました。が、まあ、豪族殺しは大罪ですからね。陳恭はビビッて李通を妨害。

 

一方の李通は「まあそうだろうな」と予測通りの様子。結局、一人で周直殺害計画を立て、宴会という罠を使って、誘い出された周直を公衆の面前でバッサリ。
当然辺りは大騒動。友人の陳恭もさすがにこうなっては、遮二無二動かざるを得なくなり、二人で主立った指揮官を血祭りにあげて回り、またたく間に周直の勢力を完全に支配下に置いたのです。

 

 

その後陳恭が弟に殺されその勢力を奪われるなどのアクシデントはありましたが、反逆した弟を攻め滅ぼし、さらには当時暴れまわっていた黄巾の一党も壊滅させるなど、汝南(じょなん)一帯で縦横無尽に暴れまわります。

 

 

一方で、偶然発生した大飢饉のときは、自分の財産を極限まで切り売りして民衆を助け、自分たちも粗末な食事しかしなかったそうです。

 

とまあこんないかにも中国風の好漢としてある種テンプレな道を突っ走っていた李通。

 

ここにきて、何を思ったのか突然、とある人物の元に身を寄せることにしました。

 

曹操です。随分突発的ともいえるこの行動が、まさに今後の李通の人生を定め、そしてその才能と漢気をさらに爆発させることとなったのでした。

 

 

 

 

 

 

曹操配下の勇将

 

曹操の配下になった後に李通の最初の活躍が記されているのは、曹操が敵である張繍との戦いに敗北した時です。

 

この時李通は配下とともに別の場所にいましたが、敗戦を知って急行。夜に曹操の本体と合流し、敗北で減った戦力をまた戦えるほどに回復させました。

 

その後のリベンジマッチでは、先鋒として活躍。張繍軍を散々に打ち破る大戦果を得て、旗揚げの地・汝南から任地を離れることなく、そのまま将軍の役職が与えられたのです。

 

 

さらには任地にいる賊を徹底的に叩き潰し、複数名の首領級の人物を討ち取り、その首を曹操に献上。汝南の淮水、汝水の地を平定。荒れに荒れていたホームグラウンドをきっちりと整える功績を立てました。それを知った曹操は、即座に李通を汝南の太守(郡の長官)に任命。

 

その後も敵性勢力が大勢(だいたい5000世帯ほど)集結する根城を攻撃しこれらを駆逐するなど、基本的には自分のホームである汝南一帯を完全に手中にするような、狭い地域で着実に戦績を上げていくような戦いが目立ちます。
これらの働きは決して派手で華々しいものではありませんが、間違いなく曹操の勢力にとっては大きな力となっていました。

 

 

その後時代は飛んで、曹操が赤壁の戦いで敗れた後の話。

 

 

曹操軍の重鎮・曹仁が守備する江陵の地を、孫権配下の周瑜劉備が手を組んで攻めてきた時に、また李通の名前が出てきます。
この時周瑜劉備連合軍は、江陵の北に勇名高い関羽を派遣。江陵の北を押さえ曹操軍の本土との連携・連絡を絶つ動きを見せていました。

 

ピンチに陥った曹仁の軍勢。そこにさっそうと現れたのが、李通の軍勢だったのです。

 

李通は馬を降りると防壁となっていた逆茂木を引き抜き、関羽の軍勢に突撃。波状攻撃でじわじわと戦線を広げつつ前進し、曹仁の軍へと到達し、見事に曹操の頼れる宿将を窮地から救い出したのです。
この時の武功は、李通が第一。結局江陵は守り切れませんでしたが、味方を湧き立たせるには十分すぎるほどの勇猛ぶりでした。

 

 

そんな李通も病には勝てず、道中で患った病気が元でほどなく死去。享年42歳。これからが楽しみな勇将の、惜しすぎる死でした。

 

 

スポンサーリンク

 

 

その義侠心こそ彼の真髄!?

 

さて、この通り短い記述の中にもキリっと光る武勇譚の持ち主である李通。しかし、彼を語る上で一番賞賛すべきは武勇よりも、むしろその人格だったのではと私は思います。

 

曹操配下になってからも、李通の漢気が見て取れる逸話が2つあります。

 

 

まず一つ。妻の叔父が逮捕されたときの話。

 

 

李通の妻の叔父が、死刑に値する大罪を犯したときのこと。当時、李通の上司だった趙儼(チョウゲン)という人は、法律にある通り、叔父を死罪にしました。

 

血縁者が死刑になったと聞いては、当然黙っていられる人は少なくありません。李通の妻子は、泣きながら伯父の死罪を取りやめるよう訴えました。が、当の李通は、「曹操様の配下となった以上、私情で道理は覆せない」と言い放ち、助命嘆願は特にしませんでした。
そして法規通り死刑が執行されると、下手に迎合して道義を破らなかった趙儼に感服し、親交を結んだとされています。

 

 

 

その後、曹操袁紹が争うようになると、有名人の李通の元には袁紹や劉表といった、当時曹操より栄えていた勢力からヘッドハンティングが来るようになります。
李通はそのすべてを聞くつもりもなく拒絶。涙ながらに、「泥船の曹操勢力にいるより、他のところに寝返って家を守れ」という声にも一喝し、
曹操様を裏切るくらいなら死を選ぶ」と明言。袁紹の使者を叩き切ったと言われています。

 

 

このように、曹操第一。仕事人間。こういえば、なんだか聞こえは悪くなりますが……
ただ、間違いなく忠義と漢気に燃える一人の熱い漢。その思い切った生き様の一端が見えてくるのは私だけでしょうか?

 

 

 

メイン参考文献:ちくま文庫 正史 三国志 3巻

 

正史 三国志〈3〉魏書 3 (ちくま学芸文庫)

中古価格
¥825から
(2017/11/12 20:57時点)

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ページ

曹操
三国志の主人公と言えば、一般的には劉備が思い浮かばれるかもしれませんが、正史基準に考えてマジで答えを出すなら、この人こそ主人公にふさわしいと言えるでしょう。
曹丕
魏の初代皇帝は実はこの人。悪ふざけが過ぎたりする辺りやはり曹操の子ですが、こちらはおふざけの質が心理攻撃に偏っているためドS王子と呼ばれることに……
曹叡
別名・土木の鬼。宮殿を大量に増設して国の財政を傾けた暗君みたいに言われることもありますが、それは貧民層に仕事を与えて救うための政策という説も……
卞氏(武宣皇后)
貴賤でいえば「賤」に属する身分の人でしたが……曹操は才女を見つけるとそんなものお構いなしにかっさらうのです。実際、よくできた人だったんだなと。
曹彰
本当はもっと下の方に伝が記載されている人物……。曹操の息子の中で、武勇ひとつのみを、それもかなり色濃く継いだ人物です。
曹昂
死んで孝行息子となった長子。その実力は史書からは計れず未知数……
夏侯惇
魏の重臣筆頭格。曹操軍のメインヒロインです。
韓浩
屯田制で有名な人。他にも何人も携わっていますが、彼ばかりが有名に……
史渙
曹操軍初期の勇将……なんだがどうにも影が薄い……
夏侯淵
別名・白地将軍。これは蔑称だから敬意を表してこう呼んじゃあかんよ。
曹仁
( ゚∀゚)o彡゜てっぺき!てっぺき!!
曹純
曹仁の弟で、曹仁伝のついでに記述あり。 文句なしの名将……のはずなんですが、活躍期間がネック……
曹洪
ドケチでがめつい人。ですが、忠義に厚くここ一番で魅せてくれる頼れる人物です。
曹休
とうとう無双最新作にも出演が決まりましたね。無能脱却なるか?
曹真
ハイパーチートデブ。人知勇すべてを持ち合わせる贅沢ぶりは、まさに将の中の将。 息子が残念なことでも有名です。
曹爽
豚になったさわやかさん
鄧颺
曹爽の取り巻きその1
丁謐
親父はそこそこ面白い人なんだけど、この人は……いや、司馬懿に喧嘩吹っ掛けたんだから大したものか。
畢軌
みんな大好き曹爽軍団の一員だよー
何晏
ヤク中にして仲間を見殺しにしようとする外道、そのくせ文学の才能は随一と言えるほどに突出……なかなか面白な人物です。
李勝
名前通りにはいかなかったよ
桓範
曹爽の取り巻きで唯一まとも・・・と思ったらDVの逸話があったでござる。
夏侯尚
ヤンデレ感漂う曹丕のマブダチ。
夏侯玄
優秀な外戚の人材なんですが……下手に人望があり過ぎても自滅するんだなって……
荀彧
穏やかで頭が良く、漢室への忠誠心の高い宰相…………と思っていたのか。
荀攸
打つ手に失策無し。賈詡と共にそう評されたガチ軍師。この人は戦場で策を練っている方が強く、むしろそういう仕事が専門だったのでしょう。脳筋絶対殺すマン。
賈詡
三国志の最優良軍師の一人。暗黒……?
袁渙
袁紹らと同族、つまり名族!
張範
なんつーかニート。すっげえニート。立派な人ですがニート。
涼茂
暴君相手に啖呵切って諫めた人。でもこの話の信憑性は微妙な物で……
国淵
史書の記述に大穴を開ける正論屋。俺この人好きやww
王脩(王修)
田疇はしばしば胡散臭いと言われますが……この人の忠義が胡散臭いとケチをつける声はまず聞きません。すげぇよ……仕えたのは袁譚なんだぜ。
田疇
ぶっちゃけ独立勢力でしょ、この人。
鮑信
曹操は後漢末の乱世において天下を統一寸前まで平定した英傑。その前半生で彼を評価した人物は数少ないですが、やはり見る人は見ているのです。
鍾繇
鍾会の親父さん……ですが、それ以上のアピールポイントが山ほどあるのに目立たないのが不思議だなと思いました。山椒。
華歆
正史では持ち上げられすぎなくらいの聖人君子、演義ではどうしようもないクズ。落差が激しすぎやしませんかね←
王朗
ただの国賊扱いとか遺憾でござる
程昱
けっこう有名どころですが、やはり知名度はまだ二流。 ガチムチの、気骨あふれるおじいさん。
郭嘉
天才軍師。そこに何らかの間違いがあるわけではありませんが……傅子の誇張表現どうした←
董昭
演義ではベジタリアン。本当この人って暗黒よね。なんだかんだいい人っぽい感じもするけど。
劉曄
こっちはガチな皇族。にもかかわらず人を殺したりアグレッシブ!
蒋済
キレッキレ酔いどれ軍師。この手の策士や謀臣はどうにも情に薄いとか心無いとかそういう印象を受けますが……この人を見ればその先入観も薄れるはず。
劉馥
短歌行で反発して斬られた人物として有名ですが、それは演義のお話。正史だと、「トンデモな能力を持った名政治家」の一人として、ひっそりと歴史に名を馳せてます。
温恢
合肥の緩衝材にしておそらく軍事の専門家。
賈逵
かきふらい
李孚
袁紹軍の文官で、後曹操軍に。こんなマニアックな人物、誰が知ろうってんだよ……
任峻
屯田政策試用の実行者。扱いは武官でいいのかな?
杜畿
激流に身を任せどうかしてしまった結果亡くなった人。つまり死因:溺死。報われねぇ……
倉慈
ネットで検索すると、大抵「掃除」に関するあれこれが出てくるような人。政治家としては、「恐れられながらも敬愛される」という最高の資質を持った辺境伯です。
張遼
魏の中でも最強クラスのレジェンド。
楽進
ちっちゃい突撃大将。最近無双シリーズにも顔を出しましたが、それまではどうにも地味。しかし、魏でも五本指に入る大将とも言われた武将で、その実力は折り紙付きです。なお資料の少なさ……
于禁
スミマセン、擁護のためとはいえ、記述と比べてもいろいろ書きすぎました……
張郃
無双だとなぜか美しい人。武官で食邑4300戸ってすごくね?
徐晃
用意周到な無敗の将軍。この人のやってること、再現しようとすると気が遠くなりそうです。
朱霊
不遇の歴戦武将。徐晃伝に彼の伝が付伝されていますが、載っている事績は失態だけ。活躍はまったく別の人物伝ばかりという。なにこれ、いじめ?
李典
無双では勘の人、三國志シリーズではハイバランスながら凹凸のないフラットな能力。武官だけど学者志向。そんな人。
臧覇
どっかで「めっぱ」とか間違って読まれてた人。 まあ、マイナーだから仕方ないね!
孫観
臧覇の部下代表。
文聘
ブンペイペーイ(゚Д゚)
呂虔
これまたマイナーどころ。名太守です。
許褚
ゲームではだいたいほんわか癒し系。
典韋
どのゲームでも人情派の荒くれとして出るゲームですが、実際の出自もそんな感じだったとか……。なおスキンヘッドだったかどうかは不明。
龐徳
ヘッポコ于禁との対比として祭り上げられる勇将。
王粲
三国志の文学者代表格。前半生がブサメンの悲哀を物語っている……
桓階
正義のためなら伝統も破る。不義理のイメージをとことんぶち壊す帝王擁立論者です。
陳羣
謹厳実直なエリート官僚ですが、九品中正法や曹操への物騒な提案などから、腹黒な食わせ物の可能性が……
楊俊
やる気のないニート・司馬懿の実力を見抜いた眼力の持ち主。
趙儼
まったくと言っていいほど目立たないものの、曹操軍の影の柱石と言ってもいい大人物。
孫礼
猛獣狩りと孤軍奮闘に定評のある人物。というか孤立無援の中戦うとか虎を徒歩で追い払おうとするとか、本当何なんこの人。
満寵
誰かがこの名前をオンラインゲームで名乗っていた時、三国志ファンを名乗る腐女子から「卑猥な名前をつけるな」と怒られたことがあるらしい。なぜだ。
田豫(田予)
北方にて異民族と戦い続けた定住型傑物。陳寿も 「あの程度で終わる人間じゃないだろ」と述べていますが……
牽招
田豫に次ぐ北方エキスパート。この人も地味に劉備と関係持ちなのね……。というか、この人も大概モーヲタなのが面白いです。
郭淮
魏軍きってのピンチヒッター。しかし病気には弱いようで、大事な局面で二度も……
徐邈
酒、聖人、酒ェ!!
王淩
言う事聞かない人。後戻りできず専横路線に乗り切った司馬懿に対し、齢80で喧嘩を吹っ掛けるという剛毅なお方です。
毌丘倹
連鎖反応に巻き込まれての反逆、処刑。おまけに名前が覚えにくいから覚えても貰えない。何とも不遇な……
鄧艾
吃音で有名ですが、たぶんアスペルガーも併発してたんじゃないかな?
薛悌
誰この人と思って調べたら普通に傑物だったでござる
閻行
人物伝第一号がまさかの超マイナー武将。 「こいつ誰だよ」って人も多いでしょうが、実はとある有名武将を一方的に叩きのめしたことも……
殷署
微妙に強そうな人……だし実際に大物くさいが、記述は……うん。
棗祗
屯田は大反対の嵐で曹操自身も難色を示したのですが、一部部下が強固に主張したので結局実行、思いがけない成果を上げました。棗祗は、特に強固に主張した人物ですね。
高祚・解𢢼
正直、ただの一発屋。人物伝の主役に取り上げるのも同化という人物ですが、面白いのでやります。
師纂
彼が悪なのか鄧艾が悪なのか……

ホーム サイトマップ
お問い合わせ