任峻


このエントリーをはてなブックマークに追加

任峻 伯達

 

 

生没年:?~建安9年(204)

 

所属:魏

 

生まれ:司隷河南尹中牟県

 

 

 

任峻 屯田 曹操 輸送部隊

 

 

 

任峻(ジンシュン)、字は伯達(ハクタツ)。そのマイナーぶりは、独自の伝が載っている人たちの中でも結構上位に来るような人物ですね。

 

この人も曹操旗揚げ以来の部下で、後方支援のエキスパートのような人物ですね。

 

 

もしかしたら、屯田制でその名前を知っている人もいるかも……

 

 

というわけで、今回は任峻の伝の記述を追っていきましょう。

 

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

董卓

 

 

任峻の名前は、董卓(トウタク)が都で専横を極めていた時に初めて出てきます。

 

この時任峻は地元の役人である楊原(ヨウゲン)とk行動を共にしていましたが、楊原は董卓を恐れてさっさと逃げようとしていました。

 

 

これを見ていろいろと思うところがあった任峻は、楊原を呼び止め、彼を説得。

 

 

「今は董卓の気勢が強く誰も彼に逆らえませんが、彼らは二の足を踏んで躊躇しているにすぎません。誰かが決起すれば、諸侯は雪崩を打って反董卓の意思を示すでしょう。

 

幸い、我らの県と近隣の諸県を合わせて動員さえすれば一万以上の兵士がそろうはずです。ここは不在の上級役人の仕事を代行する形で兵を招集し、行動に移すべきです」

 

 

かくして任峻は楊原らとともに反董卓の兵を結成。地方でも多くの雄姿が集まっていた反董卓連合軍の波が、任峻らの動きにより首都近郊にまで及ぶこととなったのです。

 

 

 

 

 

曹操軍の補給担当に

 

 

さて、この時同じくして東で兵を挙げた曹操(ソウソウ)が、任峻らが寄って立っていた県に軍勢を駐屯させました。

 

待ちに待ったようやくの友軍到着。普通ならばここで曹操に味方するのが普通ですが……この時、曹操軍はまだまだどこぞの馬の骨が率いる雑魚集団。兵たちは曹操の指揮下に入るのを不安がり、誰に味方するか決めかねていました。

 

 

しかしその中で、任峻と、同郷の張奮(チョウフン)という人物だけは旗色を明確にし、曹操に付き従う事を決意。一族郎党始め従う者だけを引き連れて曹操軍に加入し、戦力不足に悩まされていた曹操を大いに喜ばせました。

 

 

任峻らの加入に際し、曹操は「数少ない戦力が増えた」と大喜び。任峻を即座に気に入り、自身の従妹とのお見合いまでセッティングし、朝廷にも「任峻を騎都尉(近衛隊長)に任命してください」とお願いしに行くなど、絶大の信頼を彼への待遇で表しています。

 

 

 

以後任峻は、曹操の補給部隊を指揮し、戦場の裏方として影ながら曹操を支えることとなったのです。

 

表向きの活躍がない以上はどうしても影が薄くなりがちですが、物資の枯渇は軍の死活問題。補給任務は下手をすれば前線で先鋒部隊を率いるより重い仕事だったのです。

 

 

曹操の遠征の際には常に留守番係として任峻がおり、彼の軍需物資の輸送に曹操軍も大いに助けられたことでしょう。実際に兵糧切れによる敗北の記述は、曹操軍にはほとんど見当たりません。

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

 

 

屯田しましょう、屯田

 

 

 

さて、任峻の裏方としての暗躍などもあって、曹操軍はどんどん大きくなり、領土も大きく増えていきました。

 

しかし、急激な領土拡大には弊害も付きまといます。その弊害の一つこそが、軍の食糧難。任峻らによる補給もあって何とか切り盛りしてきましたが、それでもとうとう、領土拡大に物資の生産が追い付かなくなってきたのです。

 

 

しかもそんな中で、折悪くも災害が発生して飢饉にまで陥り、曹操軍の兵糧不足はさらに深刻化。事態の収拾は一刻を争う事態になりました。

 

 

そこで曹操は政治の在り方や打開策についての緊急会議を行う事になり、その場では韓浩(カンコウ)、棗祗(ソウシ)といった人物らが屯田政策の開始を提案。手始めに棗祗がこの政策を施策運用し大成功。

 

これを見た曹操は、すかさず裏方部隊の任峻を典農中郎将(テンノウチュウロウショウ:屯田責任者)として実地での屯田運用を開始し、帝のおひざ元である許(キョ)の近郊で運用、ついには不足していた食料の自給自足に成功しました。

 

 

こうして曹操軍営の農場を手に入れた曹操軍は、任峻の経営する屯田が成功したのを皮切りにあちこちに屯田を設置。軍の補給機関、ひいては軍事力を飛躍的に伸ばしていくことに成功したのです。

 

 

 

その後、官渡の戦いでも留守番役兼兵糧輸送の監督として姿を現し、輸送部隊の戦力を大幅に強化して袁紹軍の収奪から物資を守り切り、ギリギリの中で曹操軍が勝機をつかむまでの持久戦にも大いに貢献。

 

 

こうした状況に合わせた適切な輸送指揮、そして屯田による兵糧の大量確保などの功績により、任峻は都亭侯(トテイコウ)の爵位と領土を与えられ、長水校尉(チョウスイコウイ:近衛兵指揮官。名誉職でもある)に就任。

 

 

しかし、任峻の命数はこれ以上は長くはなく、建安9年(204)に逝去。任峻の死を聞いた曹操は、しばらく泣きはらしたとか。やはり彼も、曹操軍の決起当時から従った人物。さらには軍を裏で力強く支えていた柱なわけですから、曹操の彼への思い入れも相当なものだったのでしょう。

 

任峻の後は息子の任先(ジンセン)が継ぎましたが、彼には子がおらず、任先の死後には家が断絶してしまったそうです。

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

 

黎明期を支える縁の下の力持ち

 

 

彼の人物評には、「寛大で人情深く包容力があった。また、物の道理をよく掴む人物だった」とあります。

 

とく人情面では、飢饉の際には友人のみなしごを引き取って育てたという話があり、日頃から父母両方の家系の一族を援助していた等、いい人としての逸話も多い人物です。

 

 

また、彼の意見には曹操も一目置いており、意見を聞くたびに曹操が感嘆したという記述も残っている等、人格と物事を見抜く洞察力に関しては人並み外れていた事が伺えますね。

 

 

そんな任峻だからこそ、上手く農民の心をつかみ、多大な成功を収めて屯田政策を世に送り出すことができたのかもしれません。

 

 

 

屯田によって大軍運用してもバテない物資の余裕を身に着けた曹操軍ですが、その土台作りに関しては、提案した棗祗や韓浩、そして効果を証明した任峻こそがまさに功労者であったと言っても過言ではありません。

 

 

 

メイン参考文献:ちくま文庫 正史 三国志 3巻

 

正史 三国志〈3〉魏書 3 (ちくま学芸文庫)

中古価格
¥825から
(2017/11/12 20:57時点)

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ページ

曹操
三国志の主人公と言えば、一般的には劉備が思い浮かばれるかもしれませんが、正史基準に考えてマジで答えを出すなら、この人こそ主人公にふさわしいと言えるでしょう。
曹丕
魏の初代皇帝は実はこの人。悪ふざけが過ぎたりする辺りやはり曹操の子ですが、こちらはおふざけの質が心理攻撃に偏っているためドS王子と呼ばれることに……
曹叡
別名・土木の鬼。宮殿を大量に増設して国の財政を傾けた暗君みたいに言われることもありますが、それは貧民層に仕事を与えて救うための政策という説も……
卞氏(武宣皇后)
貴賤でいえば「賤」に属する身分の人でしたが……曹操は才女を見つけるとそんなものお構いなしにかっさらうのです。実際、よくできた人だったんだなと。
曹彰
本当はもっと下の方に伝が記載されている人物……。曹操の息子の中で、武勇ひとつのみを、それもかなり色濃く継いだ人物です。
曹昂
死んで孝行息子となった長子。その実力は史書からは計れず未知数……
夏侯惇
魏の重臣筆頭格。曹操軍のメインヒロインです。
韓浩
屯田制で有名な人。他にも何人も携わっていますが、彼ばかりが有名に……
史渙
曹操軍初期の勇将……なんだがどうにも影が薄い……
夏侯淵
別名・白地将軍。これは蔑称だから敬意を表してこう呼んじゃあかんよ。
曹仁
( ゚∀゚)o彡゜てっぺき!てっぺき!!
曹純
曹仁の弟で、曹仁伝のついでに記述あり。 文句なしの名将……のはずなんですが、活躍期間がネック……
曹洪
ドケチでがめつい人。ですが、忠義に厚くここ一番で魅せてくれる頼れる人物です。
曹休
とうとう無双最新作にも出演が決まりましたね。無能脱却なるか?
曹真
ハイパーチートデブ。人知勇すべてを持ち合わせる贅沢ぶりは、まさに将の中の将。 息子が残念なことでも有名です。
曹爽
豚になったさわやかさん
鄧颺
曹爽の取り巻きその1
丁謐
親父はそこそこ面白い人なんだけど、この人は……いや、司馬懿に喧嘩吹っ掛けたんだから大したものか。
畢軌
みんな大好き曹爽軍団の一員だよー
何晏
ヤク中にして仲間を見殺しにしようとする外道、そのくせ文学の才能は随一と言えるほどに突出……なかなか面白な人物です。
李勝
名前通りにはいかなかったよ
桓範
曹爽の取り巻きで唯一まとも・・・と思ったらDVの逸話があったでござる。
夏侯尚
ヤンデレ感漂う曹丕のマブダチ。
夏侯玄
優秀な外戚の人材なんですが……下手に人望があり過ぎても自滅するんだなって……
荀彧
穏やかで頭が良く、漢室への忠誠心の高い宰相…………と思っていたのか。
荀攸
打つ手に失策無し。賈詡と共にそう評されたガチ軍師。この人は戦場で策を練っている方が強く、むしろそういう仕事が専門だったのでしょう。脳筋絶対殺すマン。
賈詡
三国志の最優良軍師の一人。暗黒……?
袁渙
袁紹らと同族、つまり名族!
張範
なんつーかニート。すっげえニート。立派な人ですがニート。
涼茂
暴君相手に啖呵切って諫めた人。でもこの話の信憑性は微妙な物で……
国淵
史書の記述に大穴を開ける正論屋。俺この人好きやww
王脩(王修)
田疇はしばしば胡散臭いと言われますが……この人の忠義が胡散臭いとケチをつける声はまず聞きません。すげぇよ……仕えたのは袁譚なんだぜ。
田疇
ぶっちゃけ独立勢力でしょ、この人。
鮑信
曹操は後漢末の乱世において天下を統一寸前まで平定した英傑。その前半生で彼を評価した人物は数少ないですが、やはり見る人は見ているのです。
鍾繇
鍾会の親父さん……ですが、それ以上のアピールポイントが山ほどあるのに目立たないのが不思議だなと思いました。山椒。
華歆
正史では持ち上げられすぎなくらいの聖人君子、演義ではどうしようもないクズ。落差が激しすぎやしませんかね←
王朗
ただの国賊扱いとか遺憾でござる
程昱
けっこう有名どころですが、やはり知名度はまだ二流。 ガチムチの、気骨あふれるおじいさん。
郭嘉
天才軍師。そこに何らかの間違いがあるわけではありませんが……傅子の誇張表現どうした←
董昭
演義ではベジタリアン。本当この人って暗黒よね。なんだかんだいい人っぽい感じもするけど。
劉曄
こっちはガチな皇族。にもかかわらず人を殺したりアグレッシブ!
蒋済
キレッキレ酔いどれ軍師。この手の策士や謀臣はどうにも情に薄いとか心無いとかそういう印象を受けますが……この人を見ればその先入観も薄れるはず。
劉馥
短歌行で反発して斬られた人物として有名ですが、それは演義のお話。正史だと、「トンデモな能力を持った名政治家」の一人として、ひっそりと歴史に名を馳せてます。
温恢
合肥の緩衝材にしておそらく軍事の専門家。
賈逵
かきふらい
李孚
袁紹軍の文官で、後曹操軍に。こんなマニアックな人物、誰が知ろうってんだよ……
杜畿
激流に身を任せどうかしてしまった結果亡くなった人。つまり死因:溺死。報われねぇ……
倉慈
ネットで検索すると、大抵「掃除」に関するあれこれが出てくるような人。政治家としては、「恐れられながらも敬愛される」という最高の資質を持った辺境伯です。
張遼
魏の中でも最強クラスのレジェンド。
楽進
ちっちゃい突撃大将。最近無双シリーズにも顔を出しましたが、それまではどうにも地味。しかし、魏でも五本指に入る大将とも言われた武将で、その実力は折り紙付きです。なお資料の少なさ……
于禁
スミマセン、擁護のためとはいえ、記述と比べてもいろいろ書きすぎました……
張郃
無双だとなぜか美しい人。武官で食邑4300戸ってすごくね?
徐晃
用意周到な無敗の将軍。この人のやってること、再現しようとすると気が遠くなりそうです。
朱霊
不遇の歴戦武将。徐晃伝に彼の伝が付伝されていますが、載っている事績は失態だけ。活躍はまったく別の人物伝ばかりという。なにこれ、いじめ?
李典
無双では勘の人、三國志シリーズではハイバランスながら凹凸のないフラットな能力。武官だけど学者志向。そんな人。
李通
魏が誇るTHE・勇将の一人。なんか魏って猛将タイプの影薄いよね。
臧覇
どっかで「めっぱ」とか間違って読まれてた人。 まあ、マイナーだから仕方ないね!
孫観
臧覇の部下代表。
文聘
ブンペイペーイ(゚Д゚)
呂虔
これまたマイナーどころ。名太守です。
許褚
ゲームではだいたいほんわか癒し系。
典韋
どのゲームでも人情派の荒くれとして出るゲームですが、実際の出自もそんな感じだったとか……。なおスキンヘッドだったかどうかは不明。
龐徳
ヘッポコ于禁との対比として祭り上げられる勇将。
王粲
三国志の文学者代表格。前半生がブサメンの悲哀を物語っている……
桓階
正義のためなら伝統も破る。不義理のイメージをとことんぶち壊す帝王擁立論者です。
陳羣
謹厳実直なエリート官僚ですが、九品中正法や曹操への物騒な提案などから、腹黒な食わせ物の可能性が……
楊俊
やる気のないニート・司馬懿の実力を見抜いた眼力の持ち主。
趙儼
まったくと言っていいほど目立たないものの、曹操軍の影の柱石と言ってもいい大人物。
孫礼
猛獣狩りと孤軍奮闘に定評のある人物。というか孤立無援の中戦うとか虎を徒歩で追い払おうとするとか、本当何なんこの人。
満寵
誰かがこの名前をオンラインゲームで名乗っていた時、三国志ファンを名乗る腐女子から「卑猥な名前をつけるな」と怒られたことがあるらしい。なぜだ。
田豫(田予)
北方にて異民族と戦い続けた定住型傑物。陳寿も 「あの程度で終わる人間じゃないだろ」と述べていますが……
牽招
田豫に次ぐ北方エキスパート。この人も地味に劉備と関係持ちなのね……。というか、この人も大概モーヲタなのが面白いです。
郭淮
魏軍きってのピンチヒッター。しかし病気には弱いようで、大事な局面で二度も……
徐邈
酒、聖人、酒ェ!!
王淩
言う事聞かない人。後戻りできず専横路線に乗り切った司馬懿に対し、齢80で喧嘩を吹っ掛けるという剛毅なお方です。
毌丘倹
連鎖反応に巻き込まれての反逆、処刑。おまけに名前が覚えにくいから覚えても貰えない。何とも不遇な……
鄧艾
吃音で有名ですが、たぶんアスペルガーも併発してたんじゃないかな?
薛悌
誰この人と思って調べたら普通に傑物だったでござる
閻行
人物伝第一号がまさかの超マイナー武将。 「こいつ誰だよ」って人も多いでしょうが、実はとある有名武将を一方的に叩きのめしたことも……
殷署
微妙に強そうな人……だし実際に大物くさいが、記述は……うん。
棗祗
屯田は大反対の嵐で曹操自身も難色を示したのですが、一部部下が強固に主張したので結局実行、思いがけない成果を上げました。棗祗は、特に強固に主張した人物ですね。
高祚・解𢢼
正直、ただの一発屋。人物伝の主役に取り上げるのも同化という人物ですが、面白いのでやります。
師纂
彼が悪なのか鄧艾が悪なのか……

ホーム サイトマップ
お問い合わせ