鄧艾 士載


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【鄧艾伝3】鄧艾は発達障害?

 

 

 

 

 

人物評

 

 

 

鄧艾は司馬一族股肱の臣のひとりであり、蜀征討の大きな功労者。にもかかわらず最期は身に覚えのない反逆者の汚名を着せられてのものであり、積極的に擁護する者も出てこないという殊勲者にあるまじき結末でした。

 

鄧艾自身の生涯を見るに反乱を目論む動機らしい動機はなく、おまけに讒言の出所である鍾会は鄧艾の失脚後に蜀の地で反乱を引き起こしています。その辺り考えるに、やはり鄧艾の反乱は鍾会によるでっち上げの可能性が高いと言えるでしょう。

 

 

しかし、鄧艾も鄧艾でやはり嫌われてそのまま誰にも庇ってもらえなかったこと、そして讒言を受ける前には有頂天になりすぎて独断専行すらも目立つようになった点に関しては、やはり不当に貶められるのもある意味仕方のない事と言える気がします。

 

 

 

そんな鄧艾を、陳寿は巻末で以下のように称しています。

 

 

強い意志力をもって功績を打ち立てたが禍いを防ぐ配慮に乏しく、たちまちのうちに災厄が訪れることになった

 

 

また彼の擁護を行った元部下の段灼(ダンシャク)なる人物も、擁護文の前置きには「鄧艾は強情でせっかちな性格で、人の気持ちを軽々しく踏みにじり、そのために誰も彼を弁護してやろうとしなかった」と書かれてしまっています。

 

 

忠誠心と能力は紛れもない本物でしたが、やはり当人の態度がまずかったせいで政敵に付け入る隙を与えてしまった感は否めません。

 

権力は人を狂わすとは言いますが……鄧艾ほどの人物であっても、膨大な権力を握ったがための過大な自己評価や全能感には抗えなかったようですね。

 

 

しかし反逆者という不当な評価を覆してからは一転、性格については特に言及されることは無くなり、近年では後期随一の名将としてメディアにも引っ張りだこ、彼の廟も立てられて現在では一部が現存しているとか。

 

さらには唐の時代に「武廟六十四将」なる中国史上最も優れた武将64選のようなものが選出されましたが、その中の1人に鄧艾も加えられています。

 

 

怨敵鍾会をはじめ反逆者たちの伝の中に名前を放り込まれてしまうなど当時は不遇の目立つ鄧艾でしたが、その活躍から着目されるのも早かったのですね。

 

 

ちなみにどうでもいい話ですが、鄧艾は豚足が大好物だったようですね。河南省商水県には「毎日食べ飽きないバラエティ豊かな豚足料理」がありますが、鄧艾が豚足好きだったことから考案されたともされています。

 

 

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鄧艾と吃音

 

 

 

さて、鄧艾を表す特徴として、すでにかなりポピュラーな欠点がひとつあります。

 

それは、吃音症。要するにどもりですね。

 

 

鄧艾の吃音の種類や重さがどれほどだったのかはわかりませんが、基本的にこれらの障害は何かをしゃべるときに相当な悪印象を与えてしまう大きなハンデです。

 

今でさえ障害者差別はなかなか抑えられないのが現状ですが、当時は障害という概念が存在しなかった時代。当然ながら障害者はクズやカスみたいな輩と無条件で同一視されることも多かったでしょうし、障害を患っているだけで悪と認定される事すらあったでしょう。

 

そんな中で有能さに目を付けて出世の糸口を見いだせたのですから、鄧艾の能力や彼を評価した人たちの人物眼は並大抵ではありません。

 

 

とにかく、大きなハンデを克服して貧民から大身に代出世を遂げた鄧艾のおかげで、中国では吃音の人を励ますときに彼の名を出すのが鉄板になったとか。

 

もしかすると、鄧艾によって吃音だけはかなり早くから理解が広まった……のかもしれませんね。

 

 

 

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鄧艾は発達障害?

 

 

 

 

さて、ここからは個人的な考察というか、ちょっと引っかかる部分について自分なりに意見を述べてみたいと思います。

 

タイトルにもしましたが、鄧艾の性格の悪さを考えてみると、もしかすると発達障害なのでは……と思えてしまう部分が少なくないのです。

 

 

おおよそ、それっぽい要因として考えられるのは以下の性格的な部分。

 

 

  • 感謝はしても言葉に出さない(若年期)
  •  

  • やたらと問題視される独断専行の傾向(協調性とコミュニケーション能力の欠如)
  •  

  • 極端に空気や悪意を読めない言動(主に蜀平定後のアレ)
  •  

  • マッピングや基地想定への異常なこだわり(下級の文官時代にすらやっていたのは異常)
  •  

  • 運河形成や征蜀後の呉討伐論など、やたらと長期的な献策
  •  

  • 擁護論ですら言及されるせっかちで強情、人の気持ちを理解できない性格
  •  

  • よりによって自分が「凋落する」と予見した諸葛恪と同じ轍を踏む
  •  

  • 史書に書かれる豚足愛

 

 

 

とまあこんなところか。

 

名士たちへの意味不明な自慢や姜維を評しての自画自賛なんかから見られる傲慢さやうぬぼれなんかは、おそらく障害とは関係ない鄧艾自前の性格でしょう。

 

 

しかし、そんな傲慢すぎることを平気で口走る空気の読めなさ、やたら独断専行を好む歩調を合わせる気配ゼロの態度、傲慢でせっかちと言われてしまう譲歩や配慮をしない性格、そして意味のないマッピングの趣味や豚足好きとわざわざ書かれるレベルの狭い興味への強い執着……

 

とまあ上記に挙げたこれらは、アスペルガー、あるいはその他の自閉症スペクトラムの傾向がある人に見られがちな特徴とも合致する部分が多いです。

 

 

史書を読む限り、鄧艾に決定的に欠けていたのは、表面を取り繕って建前で本音を煙に撒こうとする努力。そしてちょうど、アスペルガーはこれらを苦手とする傾向が強いのです。

 

鄧艾伝から見える鄧艾の性格の悪さは、単純に性格の悪い人物のそれというより(そっちもあるけど)、むしろ発達障害的な配慮や柔軟性の不足からくるものが強いのではと思えてきますね。

 

 

 

仮に鄧艾が発達障害だとすれば、間違いなく出世の難易度は圧倒的。その中でロクに後ろ盾も持たないままのし上がった鄧艾は、桁外れの実力を誇る名将だったと言って過言ではないでしょう。

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