李孚 子憲
生没年:?~ ?
所属:魏?
生まれ:冀州鉅鹿郡
李孚(リフ)、字は子憲(シケン)。正直、独立した伝もない(というか賈逵伝の追加資料でついでに記載されている)ような人物で、ゲームでも二流文官、そもそも出てくること自体稀な人物です。
そんな人、まだまだ主要人物が書きあがっていない段階で……というかそもそもサイトが完成しても書く人が稀なんですが……まあ、単なる趣味ですね。
たかだか文官の、それも全体で見ればモブでしかない身でありながら、あの曹操(ソウソウ)を見事出し抜くという逸話を持っていて、それがまた格好いいんです……
まあ閻行の解説もすでにしてるし、いっか(゜▽゜;)
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いい意味で剛情?
李孚は曹操を出し抜いた逸話ほぼ一本で(他人の伝のついでとはいえ)自身の伝を打ち立てたわけですが……その前にもう一つだけ逸話があります。
興平年間(194~195年くらい)、李孚がまだ学生の時のこと。
この頃、李孚の出身である鉅鹿(キョロク)では飢饉が発生し人々は飢えに苦しんでいました。
折よくも李孚は当時ニラを育てており、成熟するまで手は付けずにおこうと心に決めていたのですが……周囲は飢饉という有り様。
当然、ニラの存在を知った人々が李孚の元におねだりに着たりもしたのですが、李孚はあろうことかこれを拒否。
「是が非でも成熟するまで手は出さん!」といった姿勢で、自分も食べず人にも配らずという意思を貫いたのです。
この李孚の姿勢を知った人々は、口々に李孚の態度をうわさ。曰く、「初志をしっかり貫徹する意志の強い人だ」と。
うーん……ん?(;´・ω・)
確かに、「意志を貫く信念の強い人」というプラスの評価を成されるのは納得なんですが……むしろ飢えに苦しんでいる人々からすれば、感じの悪い頑固者。感情的になるあまり、普通はむしろ悪いうわさが広まる可能性のが高いような気もします。
まあ、学生ってことはそこそこ以上に裕福なのは確定でしょうし、神様的存在の名士だからこそもてはやされたのかなとか思ってしまいます。当時の名士事情は闇が深い……
わたしは ととく リフ
その後晴れて学を大成させて役人になった李孚でしたが、冀州(キシュウ)を治めていた袁紹(エンショウ)が亡くなり三男の袁尚(エンショウ)が冀州を支配するようになると、彼から主簿(シュボ:秘書官)として仕えます。
さて、この時袁家では大変なことになっていて、李孚が仕える袁尚と、その兄の袁譚(エンタン)が後継者の座を巡って争っていたのです。
この時袁尚は、参謀の審配(シンパイ)を本拠地・鄴(ギョウ)に置き、袁譚との抗争に自ら参加。袁譚を圧倒していました。
が、建安9年(204)、いよいよ押し込まれて後が無くなった袁譚と曹操(ソウソウ)が和睦すると、曹操軍が審配の守る鄴の城を攻撃。
本拠地と大事な参謀が敵の攻勢にさらされた以上、袁尚も急いで援軍を編制。自ら鄴城の救援に赴きました。
が、鄴の守兵はごく少数。曹操軍の包囲も早く、袁尚らが到着した頃には曹操軍は完全に鄴を包囲。審配に援軍の到着を知らせようにも、すでに援軍到着の知らせを届けるだけの隙間は残されていなかったのです。
このままでは援軍の到着を伝えられず、絶望的な状況に陥った鄴の守備隊の士気は下がるばかり。袁尚は李孚に対して「どうやって援軍到着を知らせる使者を送り込むべきか」と相談しました。
すると、李孚は「詰まらん奴に行かせても無駄でしょう」と、自ら決死の使者に立候補。自分で信頼できそうなお供を3人選抜し、彼らと共に審配の守る鄴へと馬を走らせたのです。
とはいえ、馬鹿正直に突き進んでも敵に見つかるのは間違いありません。
そこで李孚は、敵が牧畜のために草を刈っていることに着目。馬の腹に草木を括りつけて積載し、敵に成りすまし、さらに視界の悪い夜中を選んで曹操軍の陣営に潜入したのです。
その後、曹操軍の陣営では今度は敵の都督に成りすまして鄴の北門まで向かい、標識や包囲部隊の動きに合わせて徐々に近づき、ついに鄴の門まで密着。
城壁の上にいる兵士に縄で引っ張り上げてもらい、ついに鄴城内に入り込むことに成功しました。
この李孚の行動と援軍到着の報は守備部隊の士気を大きく上げ、太鼓を打ち鳴らして万歳を唱えて彼の行動をたたえたそうです。
また、まんまとしてやられたことを知った敵大将・曹操は大笑い。「あいつめ、今度はまた何かをやらかして城から脱出するぞ」と語ったそうな。
奇策を用いて脱出!
さて、用事は済んだものの、袁尚の元へ戻るにはまた包囲網を抜けなければなりません。そこで李孚は、城を守っている審配にある策を提案。
その内容は、「住民を鄴から脱出させ、敵に降伏させて面倒を見てもらう」というもの。これには、李孚もどさくさ紛れに袁尚の元まで戻ろうという意図もあったと言われています。
ともあれ、城の食糧も少なくなっていたのもあって、審配は李孚の策を実行。
またもや夜中に城を開け放ち、選ばれた数千人の住民の一人一人に白旗と松明を持たせ、3方向の門から一斉に城から飛び出させました。
敵の包囲軍は、「鄴の城が降伏する」という知らせと松明の火で混乱し、しっちゃかめっちゃかといった様子。
李孚たちも降伏した住民らと同じ格好をして、またもやまんまと脱出。これには敵大将、曹操も大爆笑で、「やっぱりやりやがった」と手を叩いて大笑いしたそうな。
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でも曹操には勝てなかったよ
こうして無事に袁尚の元まで戻ってきた李孚でしたが、曹操軍は強く、結局袁尚の軍勢は敗走。鄴の城を救う事が出来ず、しかも李孚は袁尚とは離れ離れに。
こうなっては仕方がないと、袁尚の兄であり彼の怨敵でもある袁譚に出頭し、今度は平原(ヘイゲン)の都市を任地として彼の主簿に。
しかしそれも長くは続かず、敵である袁尚を失って曹操と険悪になった袁譚は、曹操に攻め滅ぼされて戦死。大混乱の平原は結局曹操に降伏することになりますが、それでも治安は安定しない有様でした。
そこで李孚は、自ら曹操に面会。平原の町の仔細を話します。
すると、先ほどの奇策で李孚の知略を理解していた曹操は、「李孚の思うままに布告すればいい」と独自判断での指揮を許し、李孚はこれを聞いてすぐに平原に帰還。「各々自分の仕事に落ち着き、他人を侵害しないように」とのお触れを発表。
平原が次第に落ち着きを取り戻すと、曹操の元に引き返して復命。
この李孚の話を聞いた曹操は「使える……!」とピンときたものの、どうにも悪い評判も目立っていたため、結局李孚は閑職にとどまるだけになったのです。
しかしその後は順調に出世。ついには地方の事務官から司隷校尉(シレイコウイ:上級役人の統括の役割を担う)まで上り詰めたのです。
また、70歳という高齢になってでも決断力は衰えず、さらには策略の巧みさも昔そのままだったとか。
やっぱりニラの件って悪く言われてたんじゃ……
正直、彼はほとんど曹操をうまく出し抜いたからこそ仔細の逸話が残っているといっても過言ではありません。
実際に私が初めて逸話を見た時は、「なんだこいつはー!!」と衝撃を覚えたものです。
あの手この手を使って上手く包囲網を潜り抜け、困難を極める往復路をしっかり踏破したのは鮮やかというほかありません。
が、あの曹操が重用をあきらめて閑職に置くほどの悪口が流れていたというのは少し考えてしまいますね……。
ニラを独り占めするのではなく自分も食べなかった辺り、強欲な小悪党というわけではないのでしょうが、やはり引っかかります。
李孚さん、頭が良くて機転と大きな肝っ玉を持ち合わせてはいますが、ひょっとして強情さで必要以上に敵を作っていたんじゃ?
それこそ……そう、田豊みたいに。田豊みたいに……!!
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