臧覇 宣高
生没年:?~?
所属:魏
生まれ:兗州泰山郡華県
臧覇(ゾウハ)。字は宣高(センコウ)。結構前にどこかのサイトで「めっぱ」とか言われてて、傍目に「かわいそうに(´・ω・`)」とか思った人物。
さて、そんな臧覇なのですが……正直、地味すぎて話題にすら上がらない面子の中ではトップクラスの大物だと思ってます。
陶謙(トウケン)、呂布(リョフ)と盟友を転々として渡り歩き、最終的には曹操(ソウソウ)軍の東方軍事指令官として主要な戦場の裏側を支えてきました。
今回は、そんな臧覇の伝を追っていきましょう。
スポンサーリンク
群雄臧覇
臧覇の父親は役人でしたが、上司が横暴な真似をしたので止めようとした結果、逆ギレした太守に犯罪者として逮捕されてしまいました。
この時、臧覇は18歳。血気に逸る若者であった臧覇は、横暴太守の冤罪で捕まった父を助けようと画策し、すぐに行動に移しました。
作戦はいたってシンプル。「数十人の人を雇い、父を連行している兵100人余りをしばき倒し、父を連れて亡命」。これだけです。
正直なところ、戦力差は圧倒的。とても成功の可能性は高いとは言えなかったのですが……臧覇はこれといったトラブルもなしに作戦を遂行。父を連れて里を離れ、太守の影響が及ばない地に逃げることに成功したのです。
後にお尋ね者となった臧覇ですが、この行動は武勇伝として周囲に知られるようになり、彼の勇敢さは周囲に知れ渡りました。
さて、その後は陶謙の下で戦うも、後に部下を率いて群雄として独り立ち。後に呂布が徐州を奪って曹操と争うと、呂布の同盟勢力として曹操と敵対するようになりました。
その後呂布が敗死すると臧覇たちも逃走しましたが、すでに一流の群雄に仲間入りしていた曹操からは逃げきれず、あえなくお縄についてしまったのです。
こうして群雄から一気に転落、捕虜になった臧覇。しかし曹操は気まぐれに「かつて戦った臧覇とは何者なのだろう」と気になって、少し会って話をしてみることに。
臧覇を一目会っていくつか言葉を交わしてみた曹操でしたが、その人材発掘レーダーは臧覇を見事に捉え、曹操は臧覇の才覚に一目惚れ。すぐに臧覇に元部下の面々を出頭させ、そのまま全員に大きな役職を与えて丸々召し抱えることにしたのです。
こうして曹操の配下に落ち着いた臧覇は、官渡の戦いにおいて裏戦場にもなった青州での攻防に大将として参加。袁紹を牽制して予備兵力を封じ込め、勝利に少なからず貢献しました。
また、黄巾の乱の残党の征伐や反乱を起こした武将の討伐などでも名前が挙がっており、多方面で活躍していたことがうかがえます。
さらには孫権が反乱のどさくさに紛れて攻撃してきた時も、反乱勢力の援軍に来た韓当を撃退、さらにその後も多数の敵を討ち取って追い返したりと、意外にもその名前はいたるところで登場します。
袁紹、孫権ら大敵の抑えである、東方の軍勢の重鎮として、臧覇は曹操の軍勢をよく盛り立てていったのです。
曹操死後の落ち目
しかし、曹操が亡くなってからは、その運気も急降下。
曹操の死後、その直属精鋭部隊であった青州兵が勝手に軍を辞めて帰郷してしまったのです。これには、臧覇の部隊の兵士も加わったといわれています。
曹操の跡を継いだ曹丕からは、東方の軍勢を指揮する権限を表向き与えられますが、曹一族で信任も厚い曹休の下につかされるなど、完全に警戒されている様子。
その立場を焦ったか、臧覇は上官である曹休に、意見を言います。
「朝廷は私の言うことを聞いてくれません。仮に1万の軍勢を貸していただけたら、必ず手柄を立ててみせます」
上官である曹休は、これを曹丕に報告。このことが、臧覇に対する疑念をさらに強くしてしまったようです。臧覇が中央に来た時に、曹丕は彼から軍勢を取り上げてしまいました。
その後は中央で出世を重ねたようですが、ついに独自の軍勢を与えられることもなく、そのまま史書からフェードアウト。
中央では栄転し重用されたそうですが、彼の本領が用兵にあるところを見ると、なんとも悲しい結末ですね。
スポンサーリンク
張遼の相棒?
さて、意外なことに、この人は張遼とセットで出てくることがよくあります。
そして、先述した「孫権を撃退した」という話。このときの孫権、実は反乱軍に便乗しての侵攻なのです。この時に反乱を鎮圧した武将の中に、張遼の名前があります。つまり、お互いが背中を守り合っていたとも取れますね。
ここでも、張遼とセットで先鋒を務めたという記述があり、危険を感じた張遼が独断で撤退しようとしたのを、「曹操様が我々を見捨てるがはずがない」と諫め、翌日に曹操から撤退命令が来た……とまあこんな話も。
案外、張遼と馬が合った……のかも。
群雄の矜持
臧覇がまだ独立した群雄で、曹操も兗州ひとつの中規模群雄に甘んじていた時の事です。
興平元年(194)、兗州では流浪の将であった呂布を担ぎ上げて大規模な反乱が発生。兗州のほとんどが呂布につき、曹操はあわや本拠である兗州を追われる寸前という状況に陥りました。
しかしその後曹操は徐々に勢力を盛り返し、やがて兗州全土を奪還。呂布についた将らは慌てて逃げだし、その一部が臧覇の勢力圏にまで亡命したのです。
後々臧覇が配下に加わった時、曹操はこの事を知って劉備にこの事を連絡。曹操との仲介役として、劉備が匿っている将軍たちを殺して首を渡すように言い渡しました。
しかし、臧覇はこの命令を拒否。
「私が一人の群雄としていられた理由は、一重に信頼を裏切る真似をしなかったからです。殿にご恩を受けた身である以上、命令に背くのははなはだ不本意。ですが、そもそも王者や覇者といった類の方に道義を述べるのは許されるとされております。劉備殿、どうか弁明のほど、お願いいたします」
劉備はこの話を聞いて曹操にそのまま報告しました。すると曹操は嘆息し、臧覇と顔を合わせてこう述べたのです。
「庇護を求めてきた者をかくまうのは、古人の良き行いとして伝記に残っておる。君がその通りの事を行たのは、わしにとっても望むべきことだな」
かくして曹操は、臧覇が匿っていた将を赦免。いずれも他の臧覇の重臣と同じく郡の太守にしたのでした。
関連ページ
- 曹操
- 三国志の主人公と言えば、一般的には劉備が思い浮かばれるかもしれませんが、正史基準に考えてマジで答えを出すなら、この人こそ主人公にふさわしいと言えるでしょう。
- 曹丕
- 魏の初代皇帝は実はこの人。悪ふざけが過ぎたりする辺りやはり曹操の子ですが、こちらはおふざけの質が心理攻撃に偏っているためドS王子と呼ばれることに……
- 曹叡
- 別名・土木の鬼。宮殿を大量に増設して国の財政を傾けた暗君みたいに言われることもありますが、それは貧民層に仕事を与えて救うための政策という説も……
- 卞氏(武宣皇后)
- 貴賤でいえば「賤」に属する身分の人でしたが……曹操は才女を見つけるとそんなものお構いなしにかっさらうのです。実際、よくできた人だったんだなと。
- 曹彰
- 本当はもっと下の方に伝が記載されている人物……。曹操の息子の中で、武勇ひとつのみを、それもかなり色濃く継いだ人物です。
- 曹昂
- 死んで孝行息子となった長子。その実力は史書からは計れず未知数……
- 夏侯惇
- 魏の重臣筆頭格。曹操軍のメインヒロインです。
- 韓浩
- 屯田制で有名な人。他にも何人も携わっていますが、彼ばかりが有名に……
- 史渙
- 曹操軍初期の勇将……なんだがどうにも影が薄い……
- 夏侯淵
- 別名・白地将軍。これは蔑称だから敬意を表してこう呼んじゃあかんよ。
- 曹仁
- ( ゚∀゚)o彡゜てっぺき!てっぺき!!
- 曹純
- 曹仁の弟で、曹仁伝のついでに記述あり。 文句なしの名将……のはずなんですが、活躍期間がネック……
- 曹洪
- ドケチでがめつい人。ですが、忠義に厚くここ一番で魅せてくれる頼れる人物です。
- 曹休
- とうとう無双最新作にも出演が決まりましたね。無能脱却なるか?
- 曹真
- ハイパーチートデブ。人知勇すべてを持ち合わせる贅沢ぶりは、まさに将の中の将。 息子が残念なことでも有名です。
- 曹爽
- 豚になったさわやかさん
- 鄧颺
- 曹爽の取り巻きその1
- 丁謐
- 親父はそこそこ面白い人なんだけど、この人は……いや、司馬懿に喧嘩吹っ掛けたんだから大したものか。
- 畢軌
- みんな大好き曹爽軍団の一員だよー
- 何晏
- ヤク中にして仲間を見殺しにしようとする外道、そのくせ文学の才能は随一と言えるほどに突出……なかなか面白な人物です。
- 李勝
- 名前通りにはいかなかったよ
- 桓範
- 曹爽の取り巻きで唯一まとも・・・と思ったらDVの逸話があったでござる。
- 夏侯尚
- ヤンデレ感漂う曹丕のマブダチ。
- 夏侯玄
- 優秀な外戚の人材なんですが……下手に人望があり過ぎても自滅するんだなって……
- 荀彧
- 穏やかで頭が良く、漢室への忠誠心の高い宰相…………と思っていたのか。
- 荀攸
- 打つ手に失策無し。賈詡と共にそう評されたガチ軍師。この人は戦場で策を練っている方が強く、むしろそういう仕事が専門だったのでしょう。脳筋絶対殺すマン。
- 賈詡
- 三国志の最優良軍師の一人。暗黒……?
- 袁渙
- 袁紹らと同族、つまり名族!
- 張範
- なんつーかニート。すっげえニート。立派な人ですがニート。
- 涼茂
- 暴君相手に啖呵切って諫めた人。でもこの話の信憑性は微妙な物で……
- 国淵
- 史書の記述に大穴を開ける正論屋。俺この人好きやww
- 王脩(王修)
- 田疇はしばしば胡散臭いと言われますが……この人の忠義が胡散臭いとケチをつける声はまず聞きません。すげぇよ……仕えたのは袁譚なんだぜ。
- 田疇
- ぶっちゃけ独立勢力でしょ、この人。
- 鮑信
- 曹操は後漢末の乱世において天下を統一寸前まで平定した英傑。その前半生で彼を評価した人物は数少ないですが、やはり見る人は見ているのです。
- 鍾繇
- 鍾会の親父さん……ですが、それ以上のアピールポイントが山ほどあるのに目立たないのが不思議だなと思いました。山椒。
- 華歆
- 正史では持ち上げられすぎなくらいの聖人君子、演義ではどうしようもないクズ。落差が激しすぎやしませんかね←
- 王朗
- ただの国賊扱いとか遺憾でござる
- 程昱
- けっこう有名どころですが、やはり知名度はまだ二流。 ガチムチの、気骨あふれるおじいさん。
- 郭嘉
- 天才軍師。そこに何らかの間違いがあるわけではありませんが……傅子の誇張表現どうした←
- 董昭
- 演義ではベジタリアン。本当この人って暗黒よね。なんだかんだいい人っぽい感じもするけど。
- 劉曄
- こっちはガチな皇族。にもかかわらず人を殺したりアグレッシブ!
- 蒋済
- キレッキレ酔いどれ軍師。この手の策士や謀臣はどうにも情に薄いとか心無いとかそういう印象を受けますが……この人を見ればその先入観も薄れるはず。
- 劉馥
- 短歌行で反発して斬られた人物として有名ですが、それは演義のお話。正史だと、「トンデモな能力を持った名政治家」の一人として、ひっそりと歴史に名を馳せてます。
- 温恢
- 合肥の緩衝材にしておそらく軍事の専門家。
- 賈逵
- かきふらい
- 李孚
- 袁紹軍の文官で、後曹操軍に。こんなマニアックな人物、誰が知ろうってんだよ……
- 任峻
- 屯田政策試用の実行者。扱いは武官でいいのかな?
- 杜畿
- 激流に身を任せどうかしてしまった結果亡くなった人。つまり死因:溺死。報われねぇ……
- 倉慈
- ネットで検索すると、大抵「掃除」に関するあれこれが出てくるような人。政治家としては、「恐れられながらも敬愛される」という最高の資質を持った辺境伯です。
- 張遼
- 魏の中でも最強クラスのレジェンド。
- 楽進
- ちっちゃい突撃大将。最近無双シリーズにも顔を出しましたが、それまではどうにも地味。しかし、魏でも五本指に入る大将とも言われた武将で、その実力は折り紙付きです。なお資料の少なさ……
- 于禁
- スミマセン、擁護のためとはいえ、記述と比べてもいろいろ書きすぎました……
- 張郃
- 無双だとなぜか美しい人。武官で食邑4300戸ってすごくね?
- 徐晃
- 用意周到な無敗の将軍。この人のやってること、再現しようとすると気が遠くなりそうです。
- 朱霊
- 不遇の歴戦武将。徐晃伝に彼の伝が付伝されていますが、載っている事績は失態だけ。活躍はまったく別の人物伝ばかりという。なにこれ、いじめ?
- 李典
- 無双では勘の人、三國志シリーズではハイバランスながら凹凸のないフラットな能力。武官だけど学者志向。そんな人。
- 李通
- 魏が誇るTHE・勇将の一人。なんか魏って猛将タイプの影薄いよね。
- 孫観
- 臧覇の部下代表。
- 文聘
- ブンペイペーイ(゚Д゚)
- 呂虔
- これまたマイナーどころ。名太守です。
- 許褚
- ゲームではだいたいほんわか癒し系。
- 典韋
- どのゲームでも人情派の荒くれとして出るゲームですが、実際の出自もそんな感じだったとか……。なおスキンヘッドだったかどうかは不明。
- 龐徳
- ヘッポコ于禁との対比として祭り上げられる勇将。
- 王粲
- 三国志の文学者代表格。前半生がブサメンの悲哀を物語っている……
- 桓階
- 正義のためなら伝統も破る。不義理のイメージをとことんぶち壊す帝王擁立論者です。
- 陳羣
- 謹厳実直なエリート官僚ですが、九品中正法や曹操への物騒な提案などから、腹黒な食わせ物の可能性が……
- 楊俊
- やる気のないニート・司馬懿の実力を見抜いた眼力の持ち主。
- 趙儼
- まったくと言っていいほど目立たないものの、曹操軍の影の柱石と言ってもいい大人物。
- 孫礼
- 猛獣狩りと孤軍奮闘に定評のある人物。というか孤立無援の中戦うとか虎を徒歩で追い払おうとするとか、本当何なんこの人。
- 満寵
- 誰かがこの名前をオンラインゲームで名乗っていた時、三国志ファンを名乗る腐女子から「卑猥な名前をつけるな」と怒られたことがあるらしい。なぜだ。
- 田豫(田予)
- 北方にて異民族と戦い続けた定住型傑物。陳寿も 「あの程度で終わる人間じゃないだろ」と述べていますが……
- 牽招
- 田豫に次ぐ北方エキスパート。この人も地味に劉備と関係持ちなのね……。というか、この人も大概モーヲタなのが面白いです。
- 郭淮
- 魏軍きってのピンチヒッター。しかし病気には弱いようで、大事な局面で二度も……
- 徐邈
- 酒、聖人、酒ェ!!
- 王淩
- 言う事聞かない人。後戻りできず専横路線に乗り切った司馬懿に対し、齢80で喧嘩を吹っ掛けるという剛毅なお方です。
- 毌丘倹
- 連鎖反応に巻き込まれての反逆、処刑。おまけに名前が覚えにくいから覚えても貰えない。何とも不遇な……
- 鄧艾
- 吃音で有名ですが、たぶんアスペルガーも併発してたんじゃないかな?
- 薛悌
- 誰この人と思って調べたら普通に傑物だったでござる
- 閻行
- 人物伝第一号がまさかの超マイナー武将。 「こいつ誰だよ」って人も多いでしょうが、実はとある有名武将を一方的に叩きのめしたことも……
- 殷署
- 微妙に強そうな人……だし実際に大物くさいが、記述は……うん。
- 棗祗
- 屯田は大反対の嵐で曹操自身も難色を示したのですが、一部部下が強固に主張したので結局実行、思いがけない成果を上げました。棗祗は、特に強固に主張した人物ですね。
- 高祚・解𢢼
- 正直、ただの一発屋。人物伝の主役に取り上げるのも同化という人物ですが、面白いのでやります。
- 師纂
- 彼が悪なのか鄧艾が悪なのか……