韓浩 元嗣
生没年:?~?
所属:魏
生まれ:司隷河内郡

韓浩(カンコウ)、字は元嗣(ゲンシ)。正史では、夏侯惇と一緒に軽く記述が述べられています。
正史三国志では、本当、史渙(シカン)という人とまとめて、「忠義と武勇で有名で、列侯に封じられた」と数行でさらっと流されている人物ですが……彼の活躍の詳細は、三国志が編纂された遥か後に、魏国の人々をとにかく正義の集団としてまとめられた『魏書』に、その仔細が描かれています。
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地元の名将
世の中が荒れ狂って治安が乱れる中、韓浩の故郷周辺では山賊が闊歩。というのも、身を隠すのにちょうどいい山林地帯が近所にあって、その近辺を根城に暴虐を尽くしていたのです。
「これはいかん」と思った韓浩は、人々に呼び掛けて自警団を結成。村々を荒らしまわる山賊から、自分たちの故郷を守ろうと動いていました。
その後初平元年(190)、都で董卓(トウタク)の専横が起こると、諸侯はこれをゆるさじと連合を組んで董卓に敵対。地元の太守に任命されていた王匡(オウキョウ)も、この反董卓連合軍に加わり、董卓と抗戦する構えを見せたのです。
そこで戦力を必要とした王匡は韓浩の噂を聞き、彼を起用。孟津(モウシン)の地へ向かい、董卓と激しく交戦するようになりました。
この時、韓浩を恐れた……かどうかは不明ですが、彼を牽制しようと、董卓は韓浩の叔父を捕縛。人質に取り、韓浩を味方へ引き込もうと考えます。
しかし、韓浩は脅しに屈さず、董卓の「味方になれ」との要求を拒否。董卓との戦いを継続します。
この韓浩の行動は「正義の行動」として知られるようになり、後にこの話を耳に入れた味方諸侯の袁術(エンジュツ)によって騎都尉(近衛兵長)の官職を与えられました。
夏侯惇の腹心として
その後、反董卓連合軍は諸侯の不仲によって空中分解し、王匡もその後のゴタゴタに巻き込まれて命を落としてしまいます。
これによって主君を失った韓浩でしたが、次の士官先はあっけないほどすぐに見つかりました。
曹操軍の腹心・夏侯惇(カコウトン)が韓浩の噂を耳にして、「お前と少し話がしてみたい」と面会を要望。韓浩もこれを承諾し、二人は少しばかり話し込んでみることになりました。
韓浩と会って直接議論を交わしてみた夏侯惇は、その才能を絶賛。すぐさま韓浩を取り立て、側近として兵の統率を任せるようになりました。
その後、夏侯惇の主君である曹操が外征のため留守にしている隙を突いて、兗州の諸侯が呂布(リョフ)を迎え入れて反旗を翻し、戦火は曹操の領土全体に拡大。
さらには、「これはいかん」と別所にいる曹操の妻子を救出に向かった夏侯惇が、ヒロイン力を発揮ドジを踏んで敵につかまるという大惨事に陥ってしまったのです。
呂布の兵たちは、夏侯惇を人質にとって「オラ、飯と財宝出せやコラ!」と曹操軍を脅迫し、曹操軍は「夏侯惇将軍が捕らえられた!」と大混乱に陥りました。
が、ここで顔を出したのは韓浩でした。彼は兵士たちに「動くな」と命じ、呂布軍兵士の前に姿を現すと、「一勢力の大将軍をとらえて脅迫するとは極悪人め、生かして返さんぞ! 将軍を捕らえたとて見逃されると思うな!」と大音声を張り上げ、夏侯惇に「国法です。申し訳ございません」と涙目で詫びながら呂布軍を威嚇射撃。
略奪成功を確信していた呂布軍兵士は、まさかの対応に大慌て。人質の夏侯惇の事も忘れ、見事な土下座で命乞いをします。
韓浩は、そんな呂布軍兵士をみて怒りの言葉をぶちまけ、バッサリと一刀両断。この活躍により夏侯惇は救い出され、曹操もこれを聞いてご満悦。韓浩の一連の厳しい態度は、おふれによって人質を取られたケースの模範解答として取り扱われました。
曹操の直属配下として
法令順守の態度が気に入られてか、この後韓浩は、曹操の直属へ配属を変更。
そしてある時、曹操は「政治の利害」というお題目で部下たちの政治意見を聞くことにしたのです。
この時韓浩は、棗祗(ソウシ)といった人物らと共に屯田(軍用の農地)政策の実施を急ぐよう提案。始め曹操は乗り気ではありませんでしたが、この屯田政策が後々とんでもない利益を生み出すことにつながったので大喜び。すぐに韓浩を護軍(ゴグン:各軍の監督、緩衝役)に任命し、以後韓浩は曹操軍の護軍の地位が定着するようになったのです。
建安12年(207)年には、精鋭の騎馬を率いる異民族・烏丸(ウガン)の征伐に従軍。正直なところ乗り気でなかった史渙は韓浩に相談し、曹操の烏丸討伐を考え直してもらおうとします。
が、韓浩はむしろこの征伐に賛成意見で、逆に史観を説得。
「今、我々は強敵を打倒し勢いに乗っている。烏丸は強敵だからこそ、この勢いに乗ったままに倒さなければ、いつかは害悪になるだろう。そんな中で、我々がその勢いを挫くのはよろしくはなかろう」
結局史渙は韓浩に押されて何も言わず、烏丸討伐は予定通り結構。まさかの大勝利を上げて、曹操軍は北方の憂いを断つことに成功したのです。
その後の韓浩は、建安20年(215)に名前のみ出てくるだけで、他の事績は一切不明です。
ただ、曹操が彼の死を惜しんで、子がいなかったのに家を取り潰さず養子に継がせたとあります。この事から、韓浩の死は少なくとも曹操より前であることが推察されますね。
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曹操の護軍
さて、では最後に、建安20年、韓浩の名前がさらりと上がったときの逸話をご紹介しましょう。
この年、曹操は張魯(チョウロ)を降伏させて、益州の玄関口・漢中を手に入れた。
この時誰が漢中に残って守りを固めるかで議論になったが、人々は「知略に優れており、周囲を安んじるための役割に不足はない」として韓浩を推挙。
しかし曹操は「韓浩以外にわしの護軍は務まらん」と主張した。
結局、断固として韓浩を漢中に残そうとせず、鄴(ギョウ)に帰還する際に彼を伴って帰っていった。
つまるところ韓浩は、独立部隊を引きさせるのではなく、手元に置いて直属軍を統率させたいと言わしめるほどの逸材だったようですね。
そのくせ知名度が妙に低いですが……やはり護軍は後世から見た華々しさに欠ける役職だったのか……
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