伊籍 機伯
生没年:?~?
所属:蜀
生まれ:兗州山陽郡高平県
伊籍(イセキ)、字は機伯(キハク)。劉備軍でも非常に頼りになる文官として描かれており、ゲームで出てきた際にも非常に扱いがいい人物の一人です。
当然、正史でも劉備軍での活躍期間は短いながら、独自の伝を立てられるほどの重要人物なのですが……記述の少なさが笑えるレベル!
というわけで、今回は短い短い彼の伝を追ってみましょう。
スポンサーリンク
その生涯、知略溢れる弁舌家
伊籍は兗州の出身で、同郷の劉表(リュウヒョウ)に身を寄せ、彼の配下として過ごしていました。
当然、劉表が荊州(ケイシュウ)に赴任した後も、彼について行って、主従関係は継続したままだったのです。
しかし、劉表が亡くなると、荊州に動乱が起こります。劉表の後を継いだ劉琮(リュウソウ)が曹操(ソウソウ)に降伏。家臣団が大勢曹操に降る中、一部の劉表配下反曹操の旗色を表明。劉琮の兄・劉琦(リュウキ)よその後ろ盾になった劉備(リュウビ)に付く者も少なくなかったのです。
伊籍は、そんな反曹操の人物の一人として劉備に随行。赤壁の戦いで勝利を収めたのち、どさくさ紛れに勢力を拡大し、劉備と一緒に益州の地へと向かいました。
そして劉備が益州を手中に収めると、左将軍従事中郎(サショウグンジュウジチュウロウ:左将軍お付きの幕僚)に任命されました。
※この時左将軍には劉備がついていました
その扱いたるや古参の簡雍(カンヨウ)や孫乾(ソンケン)に次ぐもので、数年前に加入したばかりの新参者にしては破格の待遇だったと言っても過言ではありません。
後に呉に勢力を築いている孫権(ソンケン)の元に使者に訪れた際には、孫権とちょっとしたやり取りを披露しています。
というのもこの孫権、困ったことに蜀からきた使節に対しあえて喧嘩を吹っ掛けて、反応を見て有能な人間かどうかを確かめるという悪癖を持っていたのです。
というわけで伊籍もこの孫権の嫌がらせの毒牙にかけられ、「劉備のように同族を滅ぼした(益州は元々同族の劉璋(リュウショウ)のものだった)無道の主君に仕えるとはご苦労な事だな」と痛烈な一言を発します。
これに対し伊籍は、「一度拝礼して一度立つだけの形式です。苦労などどこにもありません」と返答。
この発言に対し、孫権は大いに満足。その後も弁舌の才を存分に振るい、孫権に「見事だ」と言わしめるほどの大成功を収めたのです。
後に昭文将軍(ショウブンショウグン)に昇進し、国家の中枢に携わるようになります。
そして、諸葛亮(ショカツリョウ)、法正(ホウセイ)、劉巴(リュウハ)、李厳(リゲン)と共に、蜀の法律である『蜀科』を起草し、劉備の勢力の司法強化に大いに貢献しました。
その後の形跡は一切不明。いつ亡くなったかも定かではありません。が、ここまで厚遇された人物がこれ以降どこの史書にも出てこないのは想像しがたいので、蜀科を作ってしばらく後には亡くなったのではないかと推察されます。
スポンサーリンク
政治手腕にも優れた弁舌家
記述に関しては本当にこれだけですが……後に三国のうち一国の主となる孫権をうならせた弁才と、司法制定に携わったトップ5にも名前が挙がっている辺り、間違いなくかなりの人物と言えるでしょう。
ちなみに演義では、これの他に馬良(バリョウ)、馬謖(バショク)らを推挙するなどの人物眼も発揮しており、さらには劉表配下の時代にも、彼の腹心である蔡瑁(サイボウ)の陰謀から劉備の命を守るなど、なかなか渋い活躍を見せるなど、徹底した劉備シンパとしても描かれていますね。
いずれにせよ、ここまで記述が少ないのであれば、創作で彼を描く場合はいくらでも虚構を交える余地があるという事。メディアで思い思いに描かれている人物の一人と言っても過言ではないでしょう。
関連ページ
- 劉備
- 我々の間で付いたあだ名は、森の聖者オランウータン。
- 劉禅
- アホの代名詞とも言われる暗君ですが……その信憑性はどこまでのものか……
- 諸葛亮
- 「ほかに やることは ないのですか ?」
- 徐庶
- 本当は魏所属ですが、列伝の関係上蜀側に記載。
- 諸葛瞻
- 諸葛亮の息子にして、蜀の最後の星の一つ。ただし、その星は七色に光る流れ星だったのだ……
- 関羽
- みんな大好き、神にもなった髭野郎。尊敬はされても親しみを持つには恐れ多いように見えますが、彼も人間らしいダメさは持っていた……
- 張飛
- 三国志のジャイアンともいえる人。ですが、実際の性格はスネ夫……
- 馬超
- 叛逆の貴公子、演義ではいいキャラしてますが、正史ではDQNエピソードを捏造されるくらいにはアレな性格してます。
- 黄忠
- ハイパーおじいちゃんとして有名ですが、実際、彼は本当におじいちゃんだったんでしょうか?
- 趙雲
- 別殿にて熱く語られる主人公補正が最大の見所。
- 龐統
- かの諸葛亮と並び称されるほどの天才軍師……のはずなのですが、大した実績もないままに亡くなってしまったため、実際の能力は謎。
- 法正
- 法正☆マイフレンド
- 許靖
- 有名な人物評論家なのに、これまた随分と苦労人……
- 麋竺
- まさに大地主。そんな人が家を捨ててまでついて行こうと思うあたり、劉備のカリスマっていったい……
- 孫乾
- 地味に劉備軍外交官は面白い人が多い。なお記述……
- 簡雍
- 地味ながらもいい味出している人。 劉備の最古参の部下の一人です。
- 董和
- 偉大な息子を持ちながらも、本人もとんでもなく偉大だった人。清廉潔白で無欲、理想の政治家の一人ではないでしょうか。
- 劉巴
- あんた実は劉備のこと嫌いだろ。
- 馬良
- 「白眉最も良し!」の語源となった人ですね。 しかし活躍期間はそんなに長いわけではなく……
- 馬謖
- 登山\(゜ロ\)登山(/ロ゜)/
- 陳祗
- ちょっとレアキャラというかマイナーというか……。ガタガタになった蜀の中で頑張った数少ない人物の一人。が、絡んだ人物がアレなので悪党という声も……
- 呂乂
- 清きに魚も住みかねて……か。
- 劉封
- 運命は彼を裏切り者以外の何者にもさせなかった……。恨むぜベイベー。
- 彭羕
- 有能だったんだろうけど……問題児の書に伝が記されるのも、まあ納得。
- 廖立
- 見事な弁才、文才を扱き下ろしに使ったばかりに……
- 李厳
- 李厳、李厳、ぼくらの李厳♪九錫王位に野心を込めて遥か世界で戦えますか♪
- 劉琰
- 短所しかないゴミとして書き連ねられるくらいなら、闇に埋もれたほうがいい。そんな気持ちを教えてくれる人です。
- 魏延
- 反骨の相って後頭部が出っ張ってる事らしいぜ。
- 楊儀
- 魏延とはガキの喧嘩じみたいがみ合いをし、増長しまくった結果潰された、ある意味人間味にあふれた迷臣。こういう人、傍から見ると面白いですよね。
- 霍峻
- めっちゃ地味な上に活躍もほとんどないですが、普通に逸材。
- 向寵
- いつの時代にも、評価が高く期待されたのに無念の死を遂げる人物はいるものです……
- 黄権
- 夷陵の敗戦によって魏に仕えることになった忠臣。その忠義が買われて蜀の所属として名を広めている人物です。
- 馬忠(蜀)
- 中国は華やかな歴史の裏舞台で異民族との折衝や戦争を行う歴史。そんな歴史の裏舞台で地味に欠かせない役割を行う人物は、いつの時代にも存在します。
- 王平
- 蜀の名将。特に諸葛亮がいなくなった後の蜀の、数少ない頼れる存在の一人です。オウヘイヘイーイ
- 句扶
- 誰この人?
- 張嶷
- 知ってる人は知ってる名将。死に方が格好いいことで有名。
- 蒋琬
- 諸葛亮亡き後、まず最初にバトンが渡ったのがこの人。諸葛亮という巨大すぎる指導者がいなくなった蜀を混乱させずに上手く回していました。
- 費禕
- ひいいいいいいいいいいいいい!!
- 姜維
- ある時は生姜でありある時はキウイフルーツ。頑張ったで賞授賞も夢ではないほどの苦労人ですが、反面他人にも苦労を強いた人物でもあります。
- 楊戯
- 姜維を貶したばっかりに……ほら、あの人功名心強いから。
- 呉壱(呉懿)
- 蜀軍の主力武将のひとり……のはずなんですが、活躍の記述はほとんどなく、官位と昇進ぶりを他者の伝でたまに見かけるだけの人。
- 呉班
- ご飯。嘘。この人は北伐の際には後将軍になっており、実際に有能な軍人だった……はず。
- 馬岱
- 会えてうれしいYO☆ 演義や他のメディアでは大活躍の馬超の従弟ですが、正史での事績はというと……
- 関平
- 演義だと強い。でも正史だと……?
- 厳顔
- 格好いい老将として知られるが……?
- 孟達
- もはや立伝すら許されないレベルで、裏切り者として定着してしまった人物。しかし、意外にも能動的な裏切りは少なく……
- 孟獲
- 南☆蛮☆王 孟獲!等といいつつ、結局この人は南中土豪の中でも特に大物の一人といったところ。
- 陳到
- 趙雲と対になってるっても、記述がないんじゃ強いかどうかわかりにくいよね。