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厳顔

 

 

生没年:?~?

 

所属:蜀

 

生まれ:益州巴郡臨江県

 

 

 

厳顔(ゲンガン)という人物は、蜀を代表する武人の1人として、あるいは黄忠(コウチュウ)と並んで活躍する老将としてその名が知られています。

 

実際に、三国志演義においては、黄忠の相方として定軍山の戦いなんかで活躍した、と書かれていますね。

 

 

しかし悲しいことに、正史における彼は、蜀にてよく見かける事績不明の一発屋の1人。正史の出番はたった一度っきり、しかも能力を示すような話ではないという、なんとも老将好きには残念でならないという結論が待っていました。

 

 

今回は、そんな厳顔の一回きりの見せ場を見てみましょう。

 

 

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捕虜の意地

 

 

厳顔が史書に名を書き連ねられているのは、蜀志の『張飛伝』、その本文になります。

 

劉備(リュウビ)は最初劉璋(リュウショウ)の仲間と偽って益州(エキシュウ)に入りましたが、この時には張飛(チョウヒ)はじめ多くの主力武将を留守番として本拠に待機させます。

 

そして満を持して劉備が反逆ののろしを上げた時、張飛は諸葛亮(ショカツリョウ)らと共に進撃。別働隊として益州入りを果たし、そのまま劉璋軍の迎撃部隊を蹴散らしながら進んでいったのです。

 

 

厳顔も、このときに劉璋の放った迎撃部隊の将として軍を率い抗戦。巴郡(ハグン)太守という立ち位置から、おそらくかなりの高級軍人だったのでしょう。

 

 

ともあれ、一軍の大将として迎撃に向かった厳顔の相手になったのは、領内深くの江州(コウシュウ)郡にまで軍勢を進めていた張飛の一団。

 

彼我の戦力比については一切の記述がありませんが、厳顔はここで張飛の軍に惨敗し、そのまま捕縛されてしまったのです。

 

 

かくして張飛の前に引っ立てられた厳顔でしたが、張飛は「なぜ降らずに抗戦したのか!」と怒鳴りつけてします。当然ながら、完全に敵として恫喝気味に詰め寄られたわけですね。

 

とはいえ、万人の敵とまで称されるおっかない張飛に怒鳴り散らされては、普通の武将ならば降伏、あるいはせいぜい黙りこくって抵抗するくらいが関の山。張飛もそれを期待しての態度だったのでしょうが……厳顔の受け答えはまったく違ったものでした。

 

 

「この卑劣な侵略者が!この益州には処断される将はおれども、降伏して生き恥を晒す将などおらぬ!!」

 

 

敵軍きっての猛将相手に、萎縮どころか逆に挑発してみせたのです。

 

 

これには張飛も怒り心頭。その態度が虚勢かどうかを確かめるためか、それとも本気でマジギレしたか、側近に命じて無理矢理引っ張っていかせ、処刑の準備すら整えようとしたのです。

 

しかし、今この場で首を斬られようとしているにもかかわらず、厳顔は平気な顔で毅然とするばかり。

 

 

「怒る理由などどこにもなかろう。斬りたいのなら四の五の問答などせずさっさと斬れ!」

 

 

と、このようにあくまで態度を変えるつもりのない厳顔に対して、張飛は「見事なものだ」と逆に感心。その縄を切ってやり、以後は厳顔を捕虜でなく大事なお客として扱うことにしたのでした。

 

 

以後、厳顔がどうなったのかは不明。順当に行けば、劉備の配下としての地位に納まったのでしょう。

 

 

 

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有能と見られたらしい

 

 

 

 

まあ益州ひとつしか持たない劉璋の元でひとつの郡を任されたのですから、おそらく厳顔はかなり有能な部類の人間だったのではと想定できます。

 

実際に劉璋がどこまで能力主義の人事を行えたかは不明ですが……当時の益州の人材は、後に劉備軍でもかなりの大身にのし上がるような人物ばかり。その出世レースに打ち勝ったのだから、相応の武器を持っていたことが想定されます。

 

 

ちなみに『華陽国志』では劉備が益州に来たことを「どう考えてもヤバいだろ」と嘆いた人物の1人として記述があり、有能な人物は軒並み劉備の益州入りを渋った旨があるため後世の評も高かったことが伺えますね。

 

1000年ほど先の宋の時代には文天祥(ブンテンショウ)という宰相は、「正気の歌」なる歌の中で厳顔も忠臣のひとりとして取り上げています。

 

 

まあ忠誠心までは何とも言えないものの、気骨のある人物ではあったというのが、記述から見た素直な感想ですね。

 

しかし、そんな人物が劉備軍中で有名になった話が無いのは、どうしたことか。もしかしたら気骨はあっても能力が微妙だったか、はたまた劉備に仕えなかったのか仕えても長続きしなかったか、すぐに病死したのか……

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