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孫翊 叔弼

 

 

生没年:光和7年(184)~建安9年(204)

 

所属:呉

 

生まれ:?

 

 

 

 

孫翊(ソンヨク)、字は叔弼(シュクヒツ)。孫家一門に実に色濃く残っているDNAとして、軽率な性格とそのせいで寿命を全うできない呪いとも言うべき短命が挙げられます。

 

孫翊は孫権(ソンケン)の弟でありながら空白となった孫一門の頭領の座を彼とどちらが継ぐかで問題になるほどの勇猛な人物でしたが、孫一門に相応しい短命の呪いを一身に受け、その呪いの通り若くして暗殺されてしまいました。

 

この短命、軽薄という孫家のお家芸を見れば、あるいは孫翊の方が孫家の後取りと言っても良いかもしれませんね。

 

 

さて、今回はそんな孫翊伝、短いですが追っていこうと思います。

 

 

 

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孫家の跡取りに相応しい……?

 

 

 

孫翊は孫策(ソンサク)や孫権の弟であり、孫権と比べるとはるかに孫策に似たような気風があって将来を嘱望されていました。

 

 

その剛毅果断な性格はやがて孫一門の勢力の中枢を担うのではとされており、古参の名士・朱治(シュチ)によって孝廉(コウレン)に推挙。

 

その後、曹操(ソウソウ)からも兄・孫権と共に官職が贈られ、孫権と共に長兄・孫策(ソンサク)を支える大きな柱として期待され、今後も孫一門の重鎮として居座ることを期待されたのです。

 

 

建安5年(200)に孫策が暗殺されると、今度は次兄・孫権に孫家の命運が託されるようになりました。

 

カリスマを発揮した兄亡き勢力下、おそらく孫翊の立場もより重要になっていったことでしょう。その証左か、建安8年(203)には、20歳という若さで偏将軍(ヘンショウグン:将軍位は下級だが、そもそも当時の孫権勢力で将軍職は稀)となり、重要地域である丹陽(タンヨウ)の太守を任されます。

 

 

こうして孫一門の重鎮として、主に武での働きを期待された孫翊でしたが……その翌年、突如として部下の辺鴻(ヘンコウ)なる人物に暗殺され、孫策死後のゴタゴタから抜け出しつつあった江東にまたしても暗い影を落としてしまうことになるのです。

 

 

朱治からは生前、その感情的で軽薄な態度を諫められていましたが……まさしくその懸念がそのまま早すぎる死を招いたのでした。

 

 

ちなみに『典略』によれば、彼の元の名前は孫儼(ソンゲン)。

 

孫策が亡くなる際には、重臣の張昭(チョウショウ)らによって孫翊が後を継ぐようにと述べていたとか。しかし、孫策はその意見を棄却して孫権を呼び、彼に後を託したのです。

 

 

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異説とその後

 

 

さて……ここからが本番。『呉歴』にある異説と、彼の死後の一波乱についてもここに記しておこうと思います。

 

彼の妻に徐氏(ジョシ)という人がいましたが、この人がなかなかに切れ者。馬鹿感情的な夫の良きパートナーでした。

 

 

孫翊暗殺の前日、実は丹陽郡中の重役が集まっての宴会を行うことになっていたのですが……占いの達人でもある徐氏が「この日は危険」という占い結果を出し、日を改めるよう進言しました。

 

結果から言うと、この占いは大当たり。辺鴻は、孫翊から理不尽な叱責を受けて恨みを募らせた嬀覧(キラン)や戴員(タイイン)といった人物らと孫翊暗殺計画を企てていたのです。

 

 

しかしそんなことを知らぬ孫翊は、「官吏たちが来てから長いし、そろそろ帰らせねば」と予定通り宴会を決行。酔っぱらった拍子に辺鴻に殺されてしまったのです。

 

嬀覧と戴員は罪を辺鴻にすべて着せて処断。嬀覧は孫翊に代わる立場にのうのうと居座ってしまいました。側室から侍女にいたるまで自分の物とし、未亡人となった徐氏すらも愛でてしまおうと考えたようです。

 

徐氏は喪を理由にうまく切り抜けましたが、まだまだ予断を許さない状況。周囲は嬀覧らの仕業であるとわかっていたものの、あえて告発する力もなく、結局黙るしかないという有り様でした。

 

 

しかしそんな中、徐氏は孫翊の仇討ちを決意。喪に服している間に信頼する者らを集めて暗殺計画を企て、あえて嬀覧の女になる事を表明したのです。

 

これに気を良くした嬀覧は、得意満面の表情で徐氏の元に向かい、そして……

 

「さあ、やーっておしまい!」

 

……などと言い放ったかは不明ですが、徐氏の合図とともに、孫翊の側近であった孫高(ソンコウ)と傅嬰(フエイ)は嬀覧の前に飛び出して彼を殺害。他の参加者も戴員を殺し、徐氏は見事に夫の仇を討つことができたのでした。

 

 

 

まあこの話は美談すぎてどこまで信じたものかといったところですが……何にせよ、暗殺されるという事はそれなりの理由があるのは間違いなし。孫翊が恨みを買い、その結果としてこのようなドラマが史実で展開されることになったというのも、まああり得ない話ではないでしょう。

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