孫静 幼台
生没年:?~?
所属:呉
生まれ:揚州呉郡富春県
孫静(ソンセイ)、字を幼台(ヨウダイ)。孫堅(ソンケン)の末の弟で、孫一門の黎明期を影から見守ってきた裏の番人といったところですね。
兄が死んでからは表舞台に出るのを避け、ご隠居のような形で、孫家の隆盛を故郷から静かに見守りました。
そんな孫静は、何かと前に出たがる孫一門には珍しいタイプの、名前通り静かで穏やかな人物……だったのかもしれませんね。
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家を支える影の番人
孫静は孫堅の弟として生まれ、本来ならば彼を支える立場になるはずでしたが……長兄の孫羌(ソンキョウ)は早世。そして次兄・孫堅は家を出て立身出世の道を歩み、一族の長が不在という状態にありました。
そこでお鉢が回ってきたのが、末子である孫静。彼は兄に代わり、一族をまとめて家業を引き継ぐことになったのです。
孫堅の一族は他の英雄に比べると卑しいとはいえ、5,6百人の大所帯。若かりし日の孫堅が県の軍事職に就いたのを考えると、無官とはいえそこそこの家系だったのでしょう。
ともあれ、家中は孫静の的確な指示もあり、よくまとまったようです。みなが孫静を中心として一丸になり、兄・孫堅が周辺群雄と事を構えた時も、しっかりと守りを固めてそのあおりを受けることが無かったのです。
孫堅は董卓(トウタク)に反発する連合軍のエースとなり、その後は彼の故郷一帯を治める勢力とも険悪になっています。史書ではさらりと流されていますが、やはり一門に対する圧力は少なからずあったと見るべきでしょう。
そんな中で自身の血族をまとめ上げたのだから、もう少し評価されてもいい……かも?
影の助っ人
孫静が次に孫堅の血族と関わるようになったのは、孫堅の死後の事。
彼の息子の孫策(ソンサク)が逆境を乗り越えようやく日の目を見ようかという時、孫静に宛てて「せっかくだから軍に加わってほしい」と使者を差し向けたことで、彼は孫策の配下に加わることになったのです。
この時の孫策は、格上のはずの揚州(ヨウシュウ)刺史・劉繇(リュウヨウ)をまたたく間に打ち破って乗りに乗っている絶頂期。勢いに乗って揚州東部に位置する各郡を抑えるため、会稽(カイケイ)太守の王朗(オウロウ)を攻めようと考えていた段階でした。
孫静は一家眷族のみを引き連れて故郷を発つと、進軍中の孫策に合流。要害を駆使して戦う王朗に苦戦を余儀なくされる孫策の前に、必勝の策を携えて姿を現したのです。
「敵の備えに正面から挑んでも勝利は困難。ならば、備え無きを攻めるのが上策でしょう。敵の内部に足掛かりを作っていけば、必ず勝てます」
かくして孫静は、自ら願い出て先陣部隊を率い出陣。「水を瓶で煮沸消毒するように」という偽の命令通達を行い、夜になると火をくべて敵軍に自軍の居場所をあえて教えてしまいました。
その上で、自身は瓶を放置して敵軍の要衝へとこっそり進軍。焦って出てきた敵軍を徹底的に打ち破り、迎撃隊の大将である周昕(シュウキン)を討ち取ることに成功。一気に戦局を傾けてしまったのです。
この働きに喜んだ孫策はすぐに官位と重要な任務を孫静に用意しましたが……実は孫静はあまり表舞台に立ちたいと考えている人物ではありませんでした。結局、孫策のこの誘いを断り、あくまで故郷の地を守る道を選んだのです。
その後の孫静は孫策死後に孫権(ソンケン)が跡を継ぐとようやく官位を受けましたが、故郷の地を離れることなく、やがて息子・孫暠(ソンコウ)の反乱未遂により辞任。そのまま実家の畳の上で、静かに息を引き取ったのでした。
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最期まで故郷に生きた人物
王朗の軍勢を討ち破る知略がある以上、明らかに将としての生き方の方が歴史に名を刻めたのでしょうが……なるほどこんな生き方もあるのかと、そう実感させてくれる人物ですね。
孫一門隆盛の事始めは、どうしても次兄・孫堅が突出しており、他はどうにも地味な印象。しかし、孫静の数少ない活躍を見てみると、やはり目立たないだけでかなりの能力を秘めた人物だったのかなと思われます。
陳寿からは他の皇族とひとまとめにして評価されているため、その評は何とも言い切れないところはありますが……あえて載せるなら、このように書かれています。
呉の皇室の子弟たちは、ある者は国家の基礎を定めるのに力があり、ある者は国境の地の守りにあたって、その任務を立派に果たしたのであるから、その栄誉を受けずにいてよいものか。
何とも投げ遣り感漂う簡素な評価ではありますが……やはり優秀な血族のトップにこの人の名前がある限り、始祖の弟というのもあってかなり重要視されています。
さて、そんな優秀さもそうですが……個人的にもっとも目を引くのは、兄や甥たちとは似つきもしない、穏やかな生活を選ぶ大人しさ。
孫堅、孫策、孫権と孫呉の礎は代替わりで築かれてきましたが、皆それぞれに血の気の多い豪傑で、猪突猛進ともいえる問題行動が目立つ家柄。孫堅、孫策は単独で隙だらけな行動をしたばかりに命を落としましたし、孫権に至ってはあろうことか狩りの最中で虎に襲われたこともあります。
そんな危なっかしい色々と真っ赤な家系に生まれながら、孫静はあくまで稼業優先。高い官位を狙えるにもかかわらず故郷に居座り、一族郎党と共にその生涯のほとんどを過ごしています。
正直、主君らの破天荒ぶりからは信じられないほどの大人しさ……いったい何があったのでしょう。
ちなみに彼の父は瓜商人で、親に尽くす孝行息子だったとか。もしかしたら、孫静以外の血族ほとんどは母親に似た……のかもしれませんね。
なお、彼の息子たちの中には、孫権の元で名将とも呼べる活躍をした人物もいます。彼らについては、また別のページにて書き記すことにしましょう。
関連ページ
- 孫堅
- 通称堅パパ。孫呉の礎を作った、孫権の父親にして先々代にあたる人物です。
- 孫策
- 小覇王。しかしその影響力とカリスマは、本人の死後呉の末期にまで影響を与え……
- 孫権
- 三国の一角である呉の君主。地味だけど派手。派手だけど地味。
- 歩夫人(練師)
- 顔も性格もいいって最強じゃね?
- 太史慈
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- 孫瑜
- 孫静が生んだ宗室の名将1号。
- 孫皎
- 孫静の子で、こちらはなんと言うか、孫静自身より孫一門の血筋が濃い人。
- 孫賁
- 配……下……?
- 孫輔
- 一族の中でも珍しい親曹操派。この人の内通疑惑からして、孫呉の並々ならぬ裏事情が見えてくる気がします。
- 孫翊
- 孫策の弟で、その跡継ぎとして期待された人。兄・孫権から短命の呪いを吸い取ったかのごとき短命ぶりは、ある意味兄の跡継ぎに相応しいかもしれませんね。
- 孫韶
- 裴松之の注釈も含めると、記述のほとんどが叔父と彼を殺した連中を取り巻く復讐劇……
- 孫桓
- ディフェンスに定評のある名将。もっと長生きしていれば、いろいろと歴史も変わった……かも。
- 張昭
- 孫権の重臣であり親父代わりであり喧嘩友達であり宿敵……
- 顧雍
- 寡黙でありながら法家思想の徹底したモラリスト。名士の名に恥じぬ大物です。
- 諸葛瑾
- 虎になった驢馬
- 歩隲
- 呉のグダグダ丞相リレー中継ぎ陣。冷静沈着な人となりと貧乏を凌ぎながら磨き上げた一流の知略の持ち主。
- 厳畯
- プルプル、ぼく、悪い呉臣じゃないよ
- 程秉
- 呉にはほぼほぼ専門学者枠で列伝にノミネートされる人物も多いですが、彼もそんな中の一人。
- 闞沢
- 元貧乏人の超重臣。孫呉はこういう成り上がりがいるから面白い。
- 周瑜
- イケメン大正義。憎いくらいの完璧超人。
- 魯粛
- 威風堂々。建前ばかりを重んじる乱世の中で、主君に対して堂々とその野心を語ったアブナイ人ですね。
- 呂蒙
- 関羽を仕留める大手柄が、逆に人格、能力を不当に低く見積もられる要因に……歴史の闇の深さを象徴する人物。
- 程普
- 記述こそ少ない物の、間違いなく期待の名将と評しても間違いない功績を残した万能の武将です。隙?なにそれおいしいの?
- 黄蓋
- けっこう有名どころ。ゲームでも割と出てきてますよね。あと便所マン。
- 韓当
- 孫堅時代からの幽州出身者多くね?
- 蒋欽
- 周泰と呂蒙を足して2で割る
- 周泰
- 傷だらけの仕事人。
- 陳武
- 孫権軍の武勇担当。地味に孫乾より本人の記述が少なく、むしろ息子のおまけみたいな気がしなくも……
- 陳脩
- 優れてるんでしょうが、ぶっちゃけ早死にしたせいでモブ。孫家のみならず、陳家も相当短命な家系のようです。
- 陳表
- 陳武伝のメイン人物。恩義と仁愛に厚い人物で、武人でありながら、その姿はさながら儒学者でした。が、ちょっとこれはやりすぎじゃないですかね……?
- 董襲
- 義に厚く、その心は君主をも感涙させる……。 孫呉でも生粋の猛将ですが、影が薄いのはなぜか。
- 甘寧
- ただの鉄砲玉か、有望な名将か……当時の人にはどう見られていたのか?
- 凌統
- りんとーんりんとーん
- 徐盛
- 演義では丁奉とコンビのあの人だが、正史の活動時期がイマイチかみ合わないのはどうしてか。
- 潘璋
- ミスタージャイアニスト。出世払いと俺の物が口癖のイカれた剛将。
- 丁奉
- 某ゲームの顔グラのせいで、ついた仇名はスターリン。
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- ゴリ押し☆名士紹介大会!
- 朱然
- 快活ですごくいい人なオーラがあるのに、結構いろんなところで直属上司に突っかかってるイメージもある、そんな人。名将で、かつ背が低いです。
- 呂範
- 目立たぬものの、呉の柱石の一人。有能感あふれる抜擢をされた贅沢マン。
- 朱桓
- 孫呉名物ヤベー奴。知勇兼備、呉に五虎将軍があるならばその筆頭を狙えるくらいの勇将ですが、気質はまさに猛獣。実力がある分、なおのこと危険人物です。
- 陸績
- みかんの人。ぶっちゃけ孫権から見ると敵対勢力に近い存在だったのかも……
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- 熱血☆救出☆大吾粲!
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- とある動画での活躍により神の称号を持つ男。演義ベースの作品ではほとんど出てきませんが、近年徐々に注目され……
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- 陸遜を憤死するまで追い詰める等の事績からして後世の評判の悪い人物ですが……アレに関しては陸遜あたりもどっこいだと思うの。
- 呂岱
- 黄忠よりも長生きの?ハイパーおじいちゃん
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- 歴史上、ここまで忠義に厚い裏切り者は何人いるだろうか?
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- 孫邵
- 謎が多すぎる人物。一応、呉の初代丞相という立場上かなりの偉人のはずですが……
- 谷利
- 呉の典韋や許褚的な存在なんですが、如何せん登場資料が信憑性グレーなため……
- 祖郎
- 孫策のライバル(ガチ)。