孫夫人(孫尚香)


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孫夫人(孫尚香)

 

 

生没年:?~?

 

所属:呉(蜀)

 

生まれ:揚州呉郡富春県?

 

 

 

 

孫夫人(ソンフジン)、または孫尚香(ソンショウコウ)。あるいは演義だと孫仁(ソンジン)なんて名前もありましたか。

 

一般的には孫尚香という名前で日本では親しまれている人物ですが、実際に本名は知られておらず、単純に孫夫人というのが正史での呼称になっています。

 

 

吉川英治氏の三国志をはじめいろんな媒体では、弓を常に腰にかけていることから弓腰姫(キュウヨウキ)などと呼ばれる事もありますが……実際の孫夫人もとんでもない女傑、下手すると完全なDQNでした。

 

 

 

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劉備の!妻でも!屈しません!

 

 

 

孫夫人の夫である劉備(リュウビ)は彼女の兄・孫権(ソンケン)と同盟関係にあり、お互い仲良く肩を寄せ合っては料理に毒を盛り、握手する手に画鋲を仕込むような……言ってしまえば、お互いにとって油断のならない同盟相手でした。

 

まあ実際に料理に毒を仕込んだり刃物を仕込んだりというのはあくまで例え話なのですが、それでも外交の場でお互いの国や人材を公然とディスり合う等、表向き親密な同盟関係とは裏腹に大変ギスギスしたやり取りが日常茶飯事だったのです。

 

 

孫夫人は、そんな状況下で孫権が送り込んだ劉備への刺客。同盟関係をより親密なものにする一方で、どうにもそれだけでないような印象があります。

 

 

というのもこの孫夫人、劉備と会う時はいつも下女の100人余りを扉の前で武装待機させ、その上で劉備との会話だったり夜伽なんかに応じたのです。

 

後述する孫夫人の性格もまあ理由としてありますが……この応対は明らかに夫どころか、ただの味方として接するものかも怪しいところ。

 

 

当然劉備はこんな対応をされては常に神経を研ぎ澄まして臨戦態勢をとるしかなく、いつもビクビクしていたとのことです。

 

この話は諸葛亮(ショカツリョウ)も後に言及しており、法正(ホウセイ)の身勝手を告訴された時、告訴した部下に以下のように語っています。

 

 

「北に曹操(ソウソウ)、東に孫権、内部に孫夫人。劉備将軍はこれだけの驚異に囲まれていたところを、法正はしっかりと補佐して立派な国主に押し上げてくれたのだ。そんな人物が多少身勝手を働いたところで、何を咎めることができる」

 

 

……孫権はまだわかります。が、そんな脅威の存在から嫁いできた相手とは言え、妻が敵対勢力に匹敵する脅威というのは、さすがにどうなのか。

 

 

ちなみに孫夫人が兄と夫の同盟関係の本質を知っていたのかどうかは知りませんが、『趙雲別伝』によれば孫夫人の生活態度はぶっちゃけ悪く、兄が孫権なのをいいことに連れてきた部下ともども法律を無視して好き勝手していたそうな。

 

部下も好き勝手やって同盟国に多大に迷惑をかけていた辺り、さすがにわざとな気もしますが……ともあれ、これに耐えかねた劉備は厳格な趙雲(チョウウン)を孫夫人のお目付け役に任命。

 

 

策謀か天然かはわかりませんが、孫夫人は見事に蜀の名将を一人、実質的な行動不能に追いやったのでした。

 

 

 

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帰る時もタダでは済まさん!

 

 

 

まあ趙雲別伝にある極端な驕慢さはどうなのかわかりませんが……ともあれ、そんなギスギスした同盟国間のギスギス結婚生活が長続きするはずもありません。

 

結局ギスギスした仲は取り持つことができず、最後には劉備と別れて呉に帰ることになったのです。

 

 

『漢晋春秋』および『趙雲別伝』には、その孫尚香の離婚に関する逸話が書かれています。

 

劉備が益州(エキシュウ)平定を終えたことで、孫夫人は劉備との短い結婚()生活にピリオドを打ちますが、やはり離婚の際にもタダでは済ませる人物ではありませんでした。

 

 

なんと呉に帰還する際、劉備の皇太子である劉禅(リュウゼン)を連れて出立

 

確認ですが、劉禅の母親は甘夫人。間違っても孫夫人ではなく、我が子に情が沸いて慈母の精神で連れ去ったとか、そんなのはまずありえないです。それどころか一国の皇太子をさらうあたり、マジで蜀を潰すつもりだった可能性すらも……

 

 

まあ結局はお目付け役の趙雲(趙雲別伝では張飛も)が軍を率いて帰路を封鎖、劉禅の身柄を取り返したことでなんとか事なきを得ますが……本当、最後までおっかない女傑でした。

 

 

ちなみにその後の孫夫人は、呉に帰ったっきり史書に顔を出していません。後の創作では夫の死を聞いて長江に身投げしたことになっていますが……間違ってもそんなことをする人物でも、そこまでの関係ではないのは明白。

 

演義でのおしどり夫婦っぷりはどこへ行ったやら、実際の二人の関係は冷え込むを通り越してかなり剣呑としていたのです。

 

 

 

 

蜀の夫人伝に立伝はない

 

 

 

まあしっちゃかめっちゃかにするだけしてそのまま帰った(水面下では)敵国の夫人に伝なんて立てられるわけもありませんよね。

 

孫権と劉備の同盟やお互いの心境、信頼関係はどうだったのかは、おおよそ劉備と孫夫人のこの上なく物騒な夫婦関係が物語っていると思います。

 

 

一応、演義やその他の創作メディアではかなり仲の良いおしどり夫婦になっているんですけどね……やはり現実はそうはならなかった。

 

 

まあ孫夫人からすれば、失敗と妻子を捨てて逃亡を繰り返し流浪しまくってた数十歳年上の、しかも同盟関係にあるとはいえ実際敵国の君主をやってるオッサンに嫁がされたという話ですから、反攻できる余地があるならしたくなるのもわからなくもない……のか?

 

とはいえ、孫家は兄の孫権をはじめ危ない人ばかりの家系。アル中暴走大魔王の孫権の妹である以上、やはり一定数はそういった危険な血が混じっていた可能性は否めません。

 

 

ちなみに正史本文には、孫夫人の性格を以下のように記されています。

 

才気と剛勇において兄たちの面影があった。

 

 

殺戮の小覇王・孫策(ソンサク)と酒乱で名君かつ暴君の孫権、そして軽率で早死にした孫翊(ソンヨク)はじめ兄たちの面影……嫌な察ししか付きません……。

 

当時は政略や家を守るためのものに過ぎなかった女とはいえ、やはり孫家の血筋。実体はいまひとつわからないことも多いですが、女傑というのは孫夫人のような人を指すのかもしれませんね。

 

 

 

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